復旦大学薬学院の朱依諄教授らのグループが、生薬(漢方薬)でもよく使われる益母草(ヤクモソウ)という生薬から、SCM-198と呼ばれる、将来脳梗塞の治療薬にも使うことが可能かもしれない物質を発見し、結構大きなニュースになっていました。
益母草は、中医学の臨床でも婦人科を中心に応用範囲が広く、生薬の中では血の巡りをよくする活血作用と利尿作用を両方もち、あまり知られていないのですが、外用で使うと皮膚の痒みなどにも使われます。一般に、生理不順や高血圧、心臓病や腎炎による浮腫などにも使い、さらにこの益母草の種子である充蔚子(ジュウイシ)も、生薬として使われ、生理不順や月経痛、産後の腹痛、偏頭痛、目の腫れなどに使います。
こういった観点からも、益母草が、血液循環に何らかの作用があることが分かりますが、ここから有効成分を抽出することが難しく、研究が続けられていました。
今回発見されたSCM-198と呼ばれる物質は、病理状態における脳の酸素消費量を減らし、ミトコンドリアの酸化によるアポトーシス誘導を抑制し、ATPを活性させるさようがあるということです。こうして、脳細胞の死亡を食い止め、脳梗塞の治療に使える可能性が出てきました。
このように、生薬全体での効能が分かっていても、その各々でははっきり分かっていない有効物質がまだまだあります。今後の研究が楽しみです。