2010年12月27日

12月27日発売『AERA』にほんの少し登場

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 2010年12月27日に発売された朝日新聞社の週刊誌『AERA』(アエラ)中国特集「中国に勝った日本人100人」に、ほんの少しだけ登場しています。

 IT・メディアの分野では、TOKYO PANDAさんや、学術・ジャーナリストでは加藤嘉一さんなどの名前が挙がっている中、医療・環境の分野でなんと私の名前がありました。この100人の中に選ばれてしまい、大変、大変、恐縮な限りです。

 とはいえ、私の本当の仕事はこれから。

 中医学を通じて、日本と中国の橋渡しをし、中国の医療に貢献できなければ、中国政府からいただいた奨学金へのお返しができません。

 これをバネに、日々精進していきます。

 
posted by 藤田 康介 at 00:46| Comment(4) | TrackBack(0) | 最近の活動

2010年12月23日

中医学での石榴(ザクロ)と前立腺癌

 秋に、上海でもよく食べられる果物にザクロがあります。中国語でも石榴(ザクロ)です。我が家でもよく食べますが、種の大きさの割には実が少ないけど、甘酸っぱくて結構くせになる味だと私も思います。

 日本でもかなり前から話題になっているのが、ザクロの前立腺癌に対する効果で、いろいろな研究結果が発表されています。カリフオルニア大学の研究では、男性ホルモンであるテストステロンを抑制させる方法で効果のない前立腺癌の治療で、ザクロの汁(ザクロジュース)が効果があるという研究結果を発表しています。

 これによると、ザクロの汁によって、癌細胞の死亡率を増加させ、死亡した癌細胞の粘着率も下げるようです。さらにザクロに含まれる抗癌作用のあるといわれているフラボノイドやフェニルプロパノイドなどの有効成分の分析ができているということなので、今後新たな薬が誕生する可能性が十分にあります。

 ちなみに、石榴は中医薬でも生薬として使います。生薬では、中の実を使わずに皮(カラ)を使います。主な効能は下痢止めと殺虫作用で、胃・大腸経に属します。性質が、酸・温なので、慢性の下痢や、蛔虫やアメーバ赤痢のような疾患にも以前は使われたようです。そのほか、外用薬として脱肛の治療にも使いました。さらに、殺菌作用があるので、体外実験では、インフルエンザウイルスに対しても効果があるようです。

 
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2010年12月22日

6500人

 なんの人数だと思います?

 実は、上海で働いている中医執業医師(中医師)と中医執業助理医師の数です。2010年12月現在で、6511人いるそうです。私も妻ももちろんこの中の1人です。人口2000万人の都市からすると、決して多い数ではないと思います。

 中国では、厳密には医師と医士の2種類の医師がいます。医師とは大学を卒業して、資格をとった医師のことで、医士は専門学校卒業の場合です。つまり、中医執業助理医師のことを指します。西洋医学でも同様で、執業医師と執業助理医師に分かれています。

 上海でも、1級医院(社区衛生服務中心)には、まだ執業助理医師がいますが、試験を受けることで、執業医師になれるようにしています。大学医学部だけでは中国全国の医師の数を補うことができず、医療に対しても地域によって様々なニーズがあるので、こうした分け方をしているのだと考えられます。上海など都市エリアでは、今後執業助理医師は減ってくるはずです。

 ところで、中医に携わっている中医執業医師(中医師)と中医執業助理医師の割合は、上海の医師の数の13.41%で、やはり圧倒的に西洋医が多いことになります。ベッド数からでも明らかで、上海の総合病院のうち、中医系もしくは中西医結合系医院のベッド数は8486床あり、ベッド総数の10.29%あります。  

 上海は全国の中でも中医学関係の医療システム整備に力を入れているところの一つです。上海市内のは中医系・中西医結合系の総合病院は24箇所有り、このうち民間の総合病院が1箇所あります。また、うちのように外来だけのクリニック形式の医院は市内に259箇所あります。

 これ以外にも、公立病院のすべての中医科や中西医結合科が設置されているので、その数は膨大です。それほどまで、上海では中医学に対するニーズがあるということです。
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2010年12月21日

美容と健康に「松の実」

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「松の実」食べたことありますか?

 小さいながらも、非常に香ばしく美味だと思います。韓国料理なんかにもよく登場しますが、中国でもよく食べられます。ちょっとしたお菓子みたいな感覚です。お肌の美容や、老化予防のある薬膳の食材としても重宝します。

中医学では、松仁(松子仁)と呼びます。中国では東北エリアが産地で、大興安嶺地区が有名です。上海でも手に入りますが、決して安いモノではありません。(でも、日本よりかなり安いですが。。。。)

 松の実の栄養分の約15%がタンパク質で、脂肪分が6割以上を占めています。その大部分が不飽和脂肪酸なので、動脈硬化の原因となる悪玉コレステロール(LDL)対策や、心臓病の予防にもなります。

 中医学では、肺に効果があるといわれています。一般的に咳を止めたり、肺を潤す作用があります。『本草綱目』では、結核による咳にも良いと書かれていました。松の実の陰を補う性質と関係がありますね。

 さらに、中医学において、肺と皮膚とは密接に関係があるので、皮膚病や美容によいともされています。その証拠に、松の実には美容によいとされているピノレン酸やリノール酸などが豊富に含まれているので、皮膚に潤いを与える助けをしてくれます。

 松の実にはいろいろな食べ方があります。生で食べても十分おいしいですし、お粥にいれてもいいでしょう。サラダなんかにもまぶしてみると結構あいます。

 ちょっとした薬膳ですね。
posted by 藤田 康介 at 17:36| Comment(0) | TrackBack(0) | 生薬・漢方薬・方剤・中成薬

2010年12月20日

上海日本人医師会の忘年会

 今年ももう残すところあと10日あまり。
 日本式にいくと忘年会のシーズンなのですが、今回は上海の医療機関で医療活動をなさっている日本人の先生方といっしょに、虹橋開発区の日本料理屋「柚子」で、上海日本人医師会の忘年会がありました。今年、「柚子」で会食するのは何回目でしょうか。。。モバQ

 今回も日本国駐上海総領事館医務官の糸矢先生にもご参加いただき、偶然にも糸矢先生の横に座らせていただき、色々お話を伺うことができました。

 ところで、テーブルの真向かいに座られたラッフルズ メディカルの篠原先生から、興味深いお話を伺いました。
 実は、糸矢先生からもお話があったのですが、毎年、突然死などで上海で数多くの日本人が亡くなっています。突然死も少なくありません。
 そんな中、ゴルフのプレー中になくなる人が多いのだそうです。篠原先生によると、ゴルフは運動の起伏が大きく、(運動しているときと、していないときの差)、精神的な緊張感も伴って血圧が上下しやすいスポーツとのこと。そのため、コースに出ているときに倒れてしまう人が多いと言うことです。
 また、しっかりとコースを歩かない限り、ゴルフ自体の運動量は知れていて、とても脂肪を燃焼できるレベルにまでは到達しにくいのだそうで、ゴルフのプレーだけで運動ができているとは考えてはいけないということでした。また、ゴルフがうまい人のほうが、下手な人よりもよく動いているのだそうです。心の余裕があるから、他人のことも考えていろいろ世話を焼くから。なるほど。。。

 そのほか、ファミリークリニックの小林先生をはじめ、グリーンクリニックの檜先生や、国際クリニックの林先生ともいろいろ交流ができました。これからも色々な先生方のご指導を受けながら、中医学でできることを、私自身しっかりとがんばって行きたいと思います。

 浦東の東和クリニックでは、ピンチヒッターとして土曜日を中心に私、藤田が中医学(漢方)専門で出ていますので、皆さんとお目にかかるチャンスも増えるかと思います。予約等は、東和クリニックの受付(021-50179407)までお問い合わせください。

 本日は色々ありがとうございました!
posted by 藤田 康介 at 06:58| Comment(0) | TrackBack(0) | 最近の活動

2010年12月19日

腎臓結石での中医学の役割

 健康診断のデータを見せてもらうと、泌尿器に結石を持っている方が少なくありません。猛烈な痛みを経験された方もおられるはず。エコーやレントゲンで容易に発見できますし、最近、運動不足に加え、高タンパクな食事、動物の内臓などプリン体やを多く含む食べ物の摂取、ほうれん草などの野菜の渋みとも関係あるシュウ酸とも関係があります。(まさに、中華料理ですね。)
 中国人に限らず、中国にいる日本人にとっても共通の悩みかもしれません。

 腎臓結石など泌尿器での結石は、一般的に男性のほうが、女性よりも5倍近く発生しやすい傾向があり、また結石もその原因によっていくつかに分類されます。

 腎臓結石のうち、最もよく見られるのがシュウ酸カルシウムによるもので、全体の8割ほどを占めています。色は褐色をしていて、硬いのが特徴です。シュウ酸塩を多く含む食べ物として、ほうれん草が有名ですが、そのほかにもチョコレート、トマトやイチゴなどがあります。一方で、密度が低く、体積が小さい結石になりやすいのが尿酸カルシウムによる結石。黄色っぽい色の石が多いです。

 結石のそのほかの成分としては、リン酸マグネシウムアンモニウム結石やシスチンもあります。さんご状結石、鹿角(ろっかく)状結石などの形状をするのがこのパターン。取り除くのも厄介です。

 中医学(漢方)でも、泌尿器の結石には一定の効果が期待できます。ただ、あまりにも大きくなりすぎた結石はだめで、一般的に直径1センチ以下で、形が変則的ではなく、動きやすい状態にあり、尿道狭窄などがなく、水腎症を併発しておらず、水を十分に飲めて運動ができるなどの条件が必要です。
 生薬では、車前草(オオバコ)、滑石、冬葵、瞿麦、金銭草、鶏内金、海金砂などを使います。これら生薬には、利尿作用のほかにも血の巡りをよくして、詰まっているものを通す働きがあります。状況にもよりますが、1ヶ月ぐらい続けると効果が出てきて、石が小さくなって排出されうこともあります。

 水分は、1日2リットルから3リットルは摂取する必要があり、運動して結石を移動させることも大切ですし、うちのクリニックでも、車前草(オオバコ)や金銭草などを治療用の生薬茶として出すこともあります。最近の研究では、薬膳として黒木クラゲを食べると、キクラゲの中のミネラルが、結石を小さくするのに効果的であるともいわれています。そういえば、結石を出す食材として胡桃も有名ですね。

 話がずれますが、結石と言えば、牛黄。これは、牛の胆嚢結石ですが、解毒作用のある大切な生薬です。人間の結石については、薬効を聞いたことはありません。。。
posted by 藤田 康介 at 06:58| Comment(0) | TrackBack(0) | 脈案考察

2010年12月18日

中医学的冬の水分補給法

 冬になってくると、空気が乾燥してくるのですが、水分の補給も意外と疎かになってしまったりします。患者さんの話を聞いていても、結構両極端で、全く水分摂取に注意しないという人も少なくないのですが、少なくとも1日のうち3回は注意して水分を摂取してほしいものです。

 まず、1杯目は朝起きたときの水。これには、腸を潤す働きがあります。頑固な便秘の場合には、黒酢を使うと効果的です。

 2杯目は午後5時頃のお水。バタバタして忘れそうになるかもしれませんが、これには腎の陰を補う働きがあると言われています。乾燥している冬場だからこそ、陰の保護には力を入れたいところ。そして、3杯目の水は夜9時頃がいいといわれています。これは心の陰を補う働きがあります。

 水は冷たいものではなく、多少温めたものがいいです。

 それと、夜寝るときは寒いからと言って服を着すぎないこと。衣類を着すぎると、血液の循環が阻害され、皮膚表面からの呼吸もうまく行かなくなります。
posted by 藤田 康介 at 07:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 「治未病」という発想

2010年12月17日

中国都市部でもノロウイルスにご注意を

 今頃になってこちらで報道されていますが、広東省衛生庁が、広州市従化でアジア大会が開催される前の11月に、429人が下痢や嘔吐などの症状を訴えて病院に運ばれるさわぎがありました。いずれも、現地の農民だったようですが、当局の調査では、飲み水の衛生状況がよくなかったようで、市民に対して、水をしっかりと煮沸するように呼びかけていました。

 ノロウイルスは、1968年にアメリカで確認されたウイルスで、感染力が強く、汚染された食品や水を摂取すると、悪寒や喉の不快感、むかつきや嘔吐・下痢などの症状がでてくるのですが、今回の広州のケースでも、ノロウイルスであると当局が発表していました。

 中国では、もとも生水をあまり飲む習慣はありませんが、生水をさけて煮沸するようにし、中華料理に時々出てくる半生系の魚介類、冷菜などには注意する必要があります。

 中国では、1995年にはじめてノロウイルスが確認されていて、広東省など南方エリアを中心に、学校機関での集団感染が毎年のように発生しています。一般に、中国で下痢を起こした5歳以下の子供のうち、15%前後でノロウイルスが検出されているということ。血清の抗体サンプルからも、中国でのノロウイルスはかなり広くみられるようです。

 ノロウイルスで死亡することはほとんどありませんが、感染力が強いため、排泄物の処理にはマスクや手袋をして対応するなどの注意が求められています。

 しかし、アジア大会が終わってからの報道なのですね。地元の人は、下痢が流行っているというウワサをしっていたそうですが。。。
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2010年12月16日

中医学ができる看護師のトレーニング

 う〜ん、おかしい。書いたブログがどこかに消えてしまった。ということで、再度書きます。

 2010年3月に、中国国家中医薬管理局が、中国全国の中医医院に勤めている看護師に対して、全体の7割を、中医学の知識や技術のトレーニングを受けた看護師にするように通達を出しました。

 実は、上海中医薬大学など中医学系の大学では、付属の看護学校もあり、ここで一般的な西洋医学の看護師以外にも、中医学にも従事できる看護師のトレーニングを行っています。具体的には、中医学の基礎的理論の習得や、中医薬(漢方薬)の外用薬や膏薬などを使った処置、中医学の医療器具の取り扱いなど、中医学の医療現場ではあたりまえだけど、西洋医学ではあまり使わないスキルのトレーニングです。この中には、日常の看護活動の中で、患者の舌を観察したりすることも含まれていました。特に、中医学では中医薬(漢方薬)の服用方法にも特徴があるため、『中医護理常規技術操作規程』といった規範も定められています。

 また、西洋医学の看護学校を卒業して、中医医院で仕事をした場合、3年以内に100時間の中医学に関するトレーニングを受けないといけない、ともしています。

 うちのクリニックのように、中医学がメインの場合は、そうした人材も育成する必要があり、我々にとっても大きな課題でもあります。

 ただ、近年は中国でも看護師不足で、人を集めてくるのが大変ですが。。。
posted by 藤田 康介 at 07:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 中国の医療事情

2010年12月15日

頑固な咳と肝

 最近、風邪の症状はおさまったのだけど、咳がなかなか止まらないという症状で来られる方が少なくありません。西洋医学の病院もいろいろまわられて、色々なお薬を試されたのだけど、ダメだったというケースが多いのですが、中医学でも咳の治療には色々なやり方があります。

 私が最近よく見かける慢性咳は、喉がからからに感じて、喉がイガイガするというパターンです。空気の汚染とも多少関係があると思いますが、こんな時、以外と中医学では五臓六腑の肝から考えてみるとうまくいくことが多いよう思います。

 黄帝内経でも、肝の足厥陰肝経は喉と関係があると考えますし、足少陽胆経絡も耳の後ろから喉に入りますから、関係が深いことは容易に分かります。

 さらに、肝は人のストレスとも深い関係があり、肝がストレスなどで凝り固まると、肺の気の流れを乱し、咳が発生するというプロセスも考えられます。

 外からのウイルスや細菌などの外邪の影響を受けやすいのも肺なのですが、逆に五行説の金と木の関係から、肺が弱ってしまうと、肝を押さえ込むことができず、肝が盛んになって逆に肺を攻撃するというプロセスもあり、悪循環に陥ってしまうとも考えられます。さらに、肝が盛んになりすぎてしまうと、今度は身体の水分に相当する津液の代謝がよくなくなり、痰ができやすくなります。となると、柴胡系の生薬を使うことになります。

 ちなみに、慢性鼻炎やアレルギー性鼻炎、副鼻腔炎、咽頭炎などの症状があるときも、慢性の咳となることが多いのですが、昔から鼻を通す作用があるといわれている辛夷・蒼耳子・黄芩・路路通などの生薬を使い、さらに煎じたときの湯気を鼻から吸引してもらうと、すっきりとした感じがするはずです。

 また、百日咳や慢性気管支炎、肺気腫などの咳では、背中の肺兪などを温めてあげたり、足の裏の湧泉穴(足底中央の前方陥中で、足指を屈すると最も陥凹する部)に、うちの薬局でも作っている膏薬を貼り付けるという方法もあります。肺から遠い位置のツボを刺激することで、咳を納めるという方法は、中医学ではよく使います。

 咳の治療は、中医学でも本当にいろいろ経験があるものです。
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2010年12月14日

2010年12月9日より、上海市の中医薬(生薬)が一斉値上げ

 日本の漢方薬(生薬)と比較すると、まだまだ割安感のある中国の中医薬(生薬)ですが、2010年12月9日に、上海市の生薬薬価が一斉に値上がりすることになりました。

 詳細は上海市中薬行業協会のサイトで確認できますが、今回値上げが決まったのは494種類の中医薬で、値上げ幅は平均で44.06%というとこです。

 びっくりしたのが、今まで非常に安かった太子参が、15gあたり0.88元から15gあたり3.33元にまで上昇、なんと4倍近くですね。太子参は重宝する生薬なので、残念です。そのほかに、板蘭根や甘草、枸杞子、黄耆、何首烏、半夏など常用薬も値上げしてしまいました。

 上海市の薬局では、200種類の生薬に関して、すでに仕入れ値よりも売値のほうが安い状態が続いていて、生薬薬価の改定の声が高かったのです。

 自然環境の悪化などが関係しているのなら、仕方がないことですが、一部報道にあるように、投機マネーが流れ込んでいるのなら、断固として取り締まっていただきたいところです。

 中国のレアアース問題で、日本へもかなり激震が走りましたが、80%以上を中国からの輸入に頼っている日本の漢方薬に関しても同じでしょう。

 やっと、漢方原料「甘草」も脱中国…国内栽培開始へのような動きがあるようですが、正直言って遅すぎる!!!

 それでも、値上げしてしまったものは仕方がありません。
 しばらく、薬価をしっかりと計算しながらの処方になりそうです。
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2010年12月13日

冬の大根と中医学

 中医学の養生で、「冬に大根をたべて、夏に生姜を食べよう」という有名な言葉があります。なにか逆のようなイメージがありますが、生姜の発散させる力を利用して、夏に発汗して体温を下げ、食欲を増進させるだけでなく、解毒の作用もあるので、食中毒の予防にもなるという意味があります。では、冬に大根を食べるというのはどういう意味があるのか、中医学的に考えてみます。

 『大雪』後の中医学的養生でも、ご紹介しましたが、冬というのはカラダを補うことが多い季節です。しかし、補うだけでは全身に補ったものを到達させることができません。

 循環を重んじる中医学では、絶えず「流れている」ことが必要でなのですが、「補う」ことはこれと相反してしまいます。そこで、補ったあとは「通」と呼ばれる、気血の流れを整えてあげることが必要なのです。例えば、運動することも「通」です。

 我が家でも妻が時々料理しますが、牛肉や豚肉を煮込むときに、大根を入れます。実は、この大根に「通」の大切な意味があります。

 大根の種、すなわち生薬:莱服子(ライフクシ)は、気の流れを整え、食べ過ぎたときの腹部膨満感、さらに喘息などの治療にも使いますが、大根にも解毒や痰をとる作用、さらに熱を冷ます作用などがあります。肉類と一緒に摂取することで、油っぽいものに対する脾・胃の負担を和らげ、消化を助けてくれることになります。すまわち、肉などで「補う」ことに対して、動きをもたらすことができる食材ということになります。

 といっても、禁忌もあります。有名なのは、生薬人参と大根を一緒に食べないと言うこと。人参は気を補う力の強い生薬ですが、大根は気の流れを生み出す力が強く、気を補う力に支障をきたします。また、大根をたべるとゲップが出やすくなることから分かるように、「気」が出やすくなります。よって、胃潰瘍など症状がある場合は、食べ過ぎないようにしましょう。

 でも、この時期、大根が美味しくなります。季節の野菜をしっかりと食べたいですね。
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2010年12月12日

1g約1万円、生薬・冬虫夏草はどこへ行く

 正直、最近の生薬価格の上昇には、中医学や漢方をやっている関係者からするとかなり頭が痛い。もちろん、中国全体の中医学に関係する産業に影響を与えているのですが、例えば、風邪薬でお馴染みの板蘭根(バンランコン)の場合、10月ごろは10gで0.38元程度だったのが、12月に入って、0.63元ぐらいにまで値上がりしました。

 こちらはメデイアでも報道されましたが、子供の食欲不振や咳、不眠などにも使う太子参が、高騰し、今では10gで1.5元近くします。さらに、品切れということも。太子参などは、栽培もされているので影響は少ないように私も思っていたのですが、どうやら中国内陸部の気候不順で、それが影響を与えているらしい。そして、さらに投機マネーも生薬市場に流れ込んでいるというのだから、これは困ったものです。

 値段の問題でいると、高いと1gで1万円(約700〜800元程度)することもある冬虫夏草の問題は、もっと深刻です。黄金よりも高いですね!
 臨床では、私自身滅多に処方することはありませんが、それでも肺がんであったり、喘息であったり、肺疾患では使うことがあります。冬虫夏草自体、性質が穏やかなので、咳止めや免疫力を高める作用は注目されていますし、今では肝硬変、慢性腎不全やネフローゼの治療でも使います。

 冬虫夏草は昔から野生の人参や鹿茸(ロクジョウ)などとともに高価な薬として重用されていましたが、なんせ、標高3000メートルという高原に生息するため、手に入れるのが難しい生薬でもあります。そのため、冬虫夏草の乱獲が進むと、生態系への影響が懸念されています。

 冬虫夏草というのは、鞘翅目昆虫の幼虫に真菌が寄生し、春になると、真菌の部分が地面から顔を出します。そして、草のように地面に生えてくるわけですが、これを収穫するためには、地面を掘り出す必要があり、これが環境破壊につながるというわけです。

 冬虫夏草の中でも、一般的に青海省玉樹や果陽のものが品質的にもよいとされていますが、このエリアは黄河の大切な水源でもあります。過去、2回にわたって黄河の流れが止まってしまったのも、こうした環境破壊と関係あるとも言われているのです。

 皮肉なことに、人々の健康への意識が高まるにつれて、冬虫夏草のような高価な生薬が好まれ、さらに投機マネーの対象となってしまいました。商売人からすると、いいもうけ話かもしれませんが、患者さんや我々医療関係者からすると本当に頭の痛い話です。
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2010年12月11日

『大雪』後の中医学的養生

 12月にはいって、こちらのブログも毎日更新のつもりががんばっていても、週末になると中医クリニックでの診察が忙しくなり、家に戻るとバタン・キューで、ブログを書く気力もなくなってしまうのですが、今日はがんばって穴埋めします。

 さて、2010年の12月7日は暦の上で「大雪」、すなわち旧暦の11月2日になります。この時期を中心に、中国の北方エリアでは本格的に雪になるのですが、今年もまさしくその通りになりましたね。これから冬至にかけて、ますます寒さが本格化してきます。

 冬は中医学の陰陽学説で言うと、まさしく陰の季節です。また、植物を初めとして、自然界全体が「虚」の状態になるため、補うことが必要です。植物の葉っぱが落ちてしまうのも、そういった自然現象の一つですね。

 寒さが気になる時期ですから、我々はどちらかというと、暖かいもの、すなわち陽気を補うものを食べがちですが、これも結構個人差があったりするので注意が必要です。例えば、四肢が冷えやすく、足がむくんだり、疲労感が強い人の場合は、やんわり温めてくれる棗や山芋、カボチャにクリ、鶏肉やセロリ・ニラや龍眼(リュウガン・桂圓肉)、豆類がおすすめ。一方で、唇が乾燥しやすかったり、皮膚の乾燥が強い場合は、腎や肺を潤す必要があるので、卵や魚、胡麻に蜂蜜、百合根なんかを活用します。

 ただ、注意しないといけないのは、唐辛子や茴香(ウイキョウ)など、強烈な温熱作用のあるものは使いすぎないこと。逆に、陰を傷つけてしまうと考えます。また、陽気を養うために、この時期は生ものは極力避ける必要があります。

 結局は、バランスの良い食生活がポイントというわけですが、忘年会シーズンも始まるわけで、うちの中医クリニックでも、結構カラダが疲れているという人が多いのもまた事実です。
 
 そのほか、まだいろいろ「冬の蘊蓄」があるので、また後日ご紹介します。
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2010年12月10日

タバコ・酒・肥満、上海人の健康問題

 上海人の健康状態に対して、またまた心配すべき数値が出てきました。

 上海市衛生局が、上海人の健康問題のなかで、最も心配すべき課題として「喫煙率の上昇・お酒の飲み過ぎ・油、塩の摂取しすぎ」を取りあげ、その結果メタボリックシンドロームなど慢性疾患が急増しているという現状を最近発表しました。

 15歳から69歳までの17000人を対象とした調査では、55.1%の成人男性が喫煙し、特に女性の受動喫煙が深刻で、73.3%の女性が、家庭での受動喫煙の状態であるということ。また、上海市民のうち、お酒を飲む人の割合は21.6%だが、このうち8.7%が身体が1日に分解できるアルコール(男性1日60g、女性1日40g)以上のお酒を飲んでいるということ。

 そして、私が見た中で、おそらく最も問題が多いのが、食塩と油の摂取量で、油の摂取量では、全体の約60%の家庭で基準値の1日25〜30gの範囲を超えており、平均でも39gとなっていました。塩に関しては、38%の家庭で、基準値である1日6gを越えていたという旨。

 そりゃ、あのゴテゴテの中華料理を食べたら当然ですよね。

 その結果、高血圧の罹患率は23.6%となり、2002年よりも5ポイントの増加、癌の発生率も、2007年は2006年と比較して1.34%の増加となりました。

 一方で、運動に関しては若い世代で積極的に運動に参加している人は17.1%にすぎず、運動する人もまだまだ少ないのが現状。

 忙しくなって、仕事ばかりに時間を割かれてしまう上海人。
 私も人ごとではないので、せっせと自転車運動と歩き運動をがんばります。

 高齢化社会とともに、メタボ社会にもなってしまうと、未来は決して明るくないわけで、政府も早めの介入を考えているようです。
 上海はやり出したら早いですから、なにをするのか注目しています。
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2010年12月09日

高熱による乾き・嘔吐止めの芦根(ロコン)

 上海の大きな病院の周りを歩くと、道ばたで芦根をうっている行商人の姿をよく見かけます。とくに、秋から冬にかけて売られていることが多いのですが、早速私も見つけたので買ってきました。

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 上海は三方を海に囲まれている地形もあり、芦が結構生えています。写真は、上海崇明島東灘のものですが、彼方水平線まで芦が続いている風景はかなり壮観です。

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 その芦の根っこ、いわゆる地下茎が芦根です。肺・胃経に属し、高熱による喉の渇き、胃酸がこみ上げてくるような嘔吐・悪心などにも使います。そのほか、二日酔いのムカムカにも使うことができます。

 昔の文献を見てみると、『日用本草』に、フグの毒の解毒に使えるという記載があるのですが、う〜ん、おそらく軽度の場合だけではないでしょうか。

 家庭で芦根を使う場合、一番簡単なのは写真のように煮出すことです。

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 そんなに味のするものではないですが、ただ性質的にどちらかというとカラダを冷やすものなので、そのあたりが注意ですね。
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2010年12月08日

鼻炎や喘息対策、中医版ホクナリンテープの敷貼 三九貼のシーズンに

 冬至のあとにやってくる、一年で最も寒い時期を「三九」といいます。夏の最もあつい時期を「三伏」といいますが、それと対称的です。

 この寒い時期というのは、自然界も人のカラダも陽気が衰えやすくなります。カラダが冷えたり、凍えたりして、なんか調子が悪い、風邪などをひきやすいといった症状が出てくるのもこの時期。インフルエンザや肺炎なども流行します。

 そこで、中医学でもこの寒い時期の養生を大切にしますが、毎年私も処方に励む膏方なんかも、その一環です。そのほかにも、呼吸器疾患やアレルギー疾患の予防のために毎年行うのが天灸とも呼ばれる「三九貼」です。

 中には例外もありますが、一般的に、アレルギー性鼻炎や気管支喘息、気管支炎などの症状がある人の多くは、虚寒と呼ばれる陽気が不足している体質であることが多いです。そうなると、陽気が減少する時期に症状を悪化させやすくなります。そこで、経穴(ツボ)の働きを借りて、そこを生薬で作った膏薬で刺激して、経絡の流れを整え、症状を改善させて、免疫力も高めようという考え方で、中医学では昔から行われています。

 うちのクリニックでは、ホクナリンテープのように、ツボに貼り付けられるような形式をとっていますが、場所によっては豆粒のような薬の塊をつくって、貼り付けます。中には、白芥子や延胡索、細辛などの温める作用が強い発散系の生薬を使い、生姜汁や紹興酒をつかって固めていきます。

 よく使うツボは、風門(背中:第2胸椎棘突起下縁の高さ、後正中線の外方1寸5分)、肺兪(背中:第3胸椎棘突起下縁の高さ、後正中線の外方1寸5分)、腎兪(腰:第2腰椎棘突起下縁の高さ、後正中線の外方1寸5分)、膻中(胸部:前正中線上、第4肋間の高さ。両乳頭を結ぶ線の中央)、天突(胸:前胸部、前正中線上、頚窩の中央)などです。

 こうしたツボに膏薬をはると、皮膚が赤くなったり場合によっては水疱ができたりすることもありますが、これは正常な反応です。今はあまりしなくなりましたが、お灸をすると同じような反応がありました。

 クリニックに来られる患者さんの中にも、西洋医学の病院で処方されたホクナリンテープを貼っておられる方が少なくありませんが、こうした胸や背中で、肺に関係あるツボを利用するのもポイントです。

 膏薬の製作については、夜なべで膏薬作り、三伏貼をご参考に。
posted by 藤田 康介 at 06:58| Comment(0) | TrackBack(0) | 「治未病」という発想

2010年12月07日

生薬・馬銭子(マチンシ)の可能性

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 知り合いの薬剤師さんから、珍しい生薬を分けてもらいました。

 私もまずお目にかかることがありません。
 
 それは「馬銭子(マチンシ)」と呼ばれる植物マチンの種で、猛毒を持っています。臨床で使うことは滅多にないのですが、優れた痛み止め作用があるため、外用薬では今でも使われることがあります。

 過去の文献などをみてみると、四肢の痺れや痙攣、リウマチなどの痛みの治療に使われたようです。狂犬病や筋無力症の治療でも使ったような記録がありますが、現在では殆ど使われることはないと思います。内服する場合の量は、炮製しても0.3〜0.6グラムとほんのわずか。

 ただ、毒性が強いこういった生薬も、中医学では「毒で以て毒を制する」的な考え方が昔からありました。その中でも有名なのが、砒素を含む中医薬で急性前骨髄性白血病(APL)を治療したという例です。今では、このメカニズムが上海交通大学付属瑞金医院のグループで研究され、その論文を『サイエンス』に発表、一躍有名になりました。将来、ヒ素を使った癌治療の分野でも新しい発見があるかもしれません。

 とすると、こうした毒のある生薬の中に、将来、なにか大きな成果に繋がる作用が発見される可能性が十分にあります。ただ、そうした生薬を使いこなせる医師が減ってきていることは残念なことです。
posted by 藤田 康介 at 18:42| Comment(2) | TrackBack(0) | 生薬・漢方薬・方剤・中成薬

2010年12月06日

過敏性大腸炎と中医学

 胃や腸の疾患に対しては、中医薬や漢方薬は比較的有利なように感じます。なにより、薬はかならず胃・腸を通過するので、吸収もしやすいわけです。

 最近、ちょくちょく過敏性大腸炎の患者さんを診察しています。過敏性大腸炎とはいいますが、特に腸が炎症をしているわけでもないので、過敏性腸症候群と呼ぶのが一般的で、中国語では「肠易激综合征」と表記しています。

 寒くなってくるこの時期、寒邪や湿邪が身体を襲い、なにかとお腹の調子を崩しやすいですが、それ以外にも精神的要素や薬物によるもの、飲食の不摂生などとも関係があります。特に、上海のようなジメジメした寒さでは、腸の調子を崩しやすい条件がそろっているのも確かです。

 腹痛のほかにも便秘や下痢の繰り返し、さらには粘液性の大便や消化不良もよく見かけます。となると、脾の働きを整えるのにはどうするか?ということになります。

 中医学や漢方の生薬を続けていると、まず便の形が整いはじめ、さらに便の回数が減ってくることはよくあります。1日4回ぐらいトイレに行っていたのが、1回ぐらいで済むようになるケースも少なくありません。

 基本的に、症状から証を分類していきますが、肝・脾・胃をメインに考え、その上で外邪の影響を考慮しています。お灸なども組み合わせると、より統合的な治療になると思います。
posted by 藤田 康介 at 23:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 脈案考察

2010年12月05日

足湯(足浴)についていろいろ考える

 12月7日は上海奈良県人会で、ほんの少し足湯(足浴)についてお話させていただきました。日本での講演でもいろいろご紹介している題目なのですが、私自身も色々研究しているところもあり、皆さんと広く交流できたらと思っています。沢山ご質問をいただき、嬉しかったです。

 その中で、足湯に使う生薬の状態について、どの状態が一番いいのか、私も日々色々試しています。

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 例えば、杭州の胡慶余堂では、上の写真のように生薬を粉にして紙袋に入れていました。薬局の手間からすると、簡単でしょう。私も以前試して見ましたが、やはり紙袋が破けてしまいます。

 そこで、生の生薬をそのまま入れることも考えましたが、40℃前後のお湯では、有効成分が十分に出せきれません。結局、うちの薬局で煎じてしまい、煎じたエキスをそのまま足湯に使うことにしました。

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 もちろん、患者さんの主訴によって、どの足湯・薬浴・入浴を使うのかは、そのつど処方を変えていますが、一番使いやすくて効果がいい方法を研究しています。

 結果、中医学の生薬の使い方から考えると、煎じて使うのがベストではないかと思っています。これについては、日本の先生方ともいろいろ研究を続けています。
posted by 藤田 康介 at 00:00| Comment(1) | TrackBack(0) | 「治未病」という発想