いよいよ、日本でも中医学の本格的な学会組織(The Japan Traditional Chinese Medicine Assosiation)が動き出します。その第1回の設立記念シンポジウムが、8月29日に東京王子の北とぴあで開催されました。私の今回の日本訪問の最大の目的の一つです。
日本全国から中医学に携わる医師・鍼灸師・薬剤師・製薬関係者などが集まり、広く意見交換ができる学術的な組織に成長させていきたいと私も思います。日本中医学会設立準備委員会の委員長は、日本大学医学部の酒谷薫先生で、そのほか中医学の日本普及に力を尽くされ、ご自身も中国留学経験がある平馬先生や、日本の中医鍼灸の草分けの一人でもある兵頭先生など多くの先生方が集まりました。
私も、この記念すべき第1回の会合に参加できて、大変光栄です。
会場はかなりの大盛況で、椅子がなくなってしまうほど。いかに、いま、日本で中医学に対しての期待が高いかが実感できます。同時に、今までの治療の域から、よりアカデミックな発展をしなければならない、責任も感じます。今回お話しされた、順天堂大学の田平 武先生のアルツハイマー病の免疫療法、光診断学創設に向けて、北京の精華大学で研究活動を行われている田村 守先生、そして薬学の分野から、モノクローナル抗体研究について発表された正山 征洋先生のお話など、日頃勉強するチャンスがない内容だっただけに、興味深かったです。生薬甘草をとっても、中には330種類以上の成分があり、それらが複雑に絡み合って効果を引き出しているのが中医学。最先端の科学との融合が、今後ますます進むものと思われます。
鍼灸の兵藤 明先生は、後藤学園の中医学研究所所長ですが、認知症に対する治療で、鍼灸を使った取り組みを行っています。高齢化の問題は、上海でも同様で、日本でも鍼灸を使った試みが行われているのは、私も非常に関心がありました。認知症の患者数は、2015年には日本だけでも250万人に達すると言うことです。今後、アジア全体の問題となる中、鍼灸と漢方薬も含めた中医学全体での取り組みが求められることでしょう。
私が個人的に最も感銘したのは、新型インフルエンザの漢方治療経験で発表された熊本赤十字病院の加島 雅之先生の報告でした。中医学的な側面で、弁証をわかりやすく整理され、我々臨床家にとっても非常に参考になる内容でした。日本では、温病・傷寒の区別せずに麻黄湯・葛根湯などが臨床で使われましたが、一部効果が思わしくなかったものもあり、湿邪に対する対策も重要であることを話されました。我々、上海にいる患者さんでも、昨年度のインフルエンザでその傾向があり、納得しました。一方で、我々中国でやっている中医学だからこそ実現できる治療法もたくさんあり、これらは我々の強みとして今後実践していきたいと思いました。
中国の専門家も多数参加され、国際色豊かな会議となりましたが、今後、伝統医療の分野でもますます日中間の交流が盛んになると思います。そういった意味でも、今回の学会は記念すべきものだったと思います。
2010年08月30日
2010年08月28日
東京表参道でのセミナー&パーティー

東京表参道にあるバンブーで、株式会社 Luxury Heartのお招きで、セミナーと交流会を行ってきました。
東京でのお話は、今回は2回目で、このシリーズでは主に一般向けの養生のお話と、中医学の基礎をご紹介しています。毎回、様々な業種の方がお越しで、健康と中医学に関心のある方が多く、話す私もかなり力が入りました。
こうした活動は、私にとっては中医学の魅力を広めることができる絶好のチャンスで、医療関係者以外にも中医学の裾野が広がってくれることに期待します。また、それが中国で奨学金を頂いて勉強させて頂いた私にとっては、一つの恩返しだとも思っています。
会場は、50人を超える入場者があり、その後の交流会も非常に盛り上がりました。中医学というのは、私のやっている医療だけにとどまらず、広く人々の日常にも関係があり、しかもそうした養生は自分でも実践できるものです。
異常気象など、近年の地球には非常に住みにくい環境がそろっています。そういう時だからこそ、昔の人の知恵を借りてみたいと思う今日この頃です。
2010年08月26日
クロネコヤマトさんが使えるようになりました
うちの鼎瀚(ていかん)中医クリニックでは、エキス剤や粉薬、錠剤やシロップ・軟膏などすぐに院内薬局で調剤できるものは、その場で患者さんにお渡ししていますが、前じる必要のある煎じ薬に関しては、こちらで煮出すのに時間を要しますので、以前からご自宅または会社まで配達させていただいております。
そこで、この配達業者さんに、8月26日から上海で急成長し続けている日系のクロネコヤマト(雅玛多)さんを導入しました。
生薬(漢方薬)という医薬品を運ぶため、いろいろ注意しなければならない問題点も多く、検討に検討を重ねての準備をなりましたが、ヤマトさんのおかげで日本では当たり前だった「時間指定」の配達が実現し、より確実に生薬(煎じ薬・漢方薬)を患者さんのお手元にお届けすることができます。
ただし、当面は上海エリアでの対応になります。上海以外にエリアにつきましては、従来通りの輸送方法でお送りいたしますので、ご了承ください。
より新鮮に、素早く、確実に煎じたての漢方薬をお手元にお届けできるようにこれからもがんばります!
しかし、上海の生活も便利になったもので、うちの中医クリニックでもいろいろ導入してみたいと思っています。
そこで、この配達業者さんに、8月26日から上海で急成長し続けている日系のクロネコヤマト(雅玛多)さんを導入しました。
生薬(漢方薬)という医薬品を運ぶため、いろいろ注意しなければならない問題点も多く、検討に検討を重ねての準備をなりましたが、ヤマトさんのおかげで日本では当たり前だった「時間指定」の配達が実現し、より確実に生薬(煎じ薬・漢方薬)を患者さんのお手元にお届けすることができます。
ただし、当面は上海エリアでの対応になります。上海以外にエリアにつきましては、従来通りの輸送方法でお送りいたしますので、ご了承ください。
より新鮮に、素早く、確実に煎じたての漢方薬をお手元にお届けできるようにこれからもがんばります!
しかし、上海の生活も便利になったもので、うちの中医クリニックでもいろいろ導入してみたいと思っています。
2010年08月21日
上海の中医学の婦人科
上海の中医学にも様々な特徴がありますが、そこには流派が形成されたものも少なくありません。
今でも、100年以上の歴史を持つ中医学の婦人科の流派は残っており、ざっと挙げてみても朱氏・蔡氏・陳氏・何氏など10あまりの流派が上海にあります。それだけ、昔から婦人科と中医学との関係は密接です。
私も、日頃の診察で感じているのは、日本人・中国人に限らず、女性の生理に関する問題を抱えている方が増えているという点です。とくに、学歴が高くて収入が高く、仕事をバリバリとこなす女性に多く、調査では上海の女性の場合、生理不順のほか、生理痛を含む月経困難症などの諸症状を抱えている人の割合が、7割程度にも及ぶということです。背景には、様々な影響による卵巣の機能低下とも関わりがあるとも言われています。
そうした中、ストレスが大きな原因だとも考えらていますが、流産の経験があったり、ダイエットをやったことがあったりすることとも関係があったりします。
婦人科では、中医学や漢方医学の活用が有効なことが多いですが、十分な睡眠と、飲食のコントロール、心理的な安定など薬以上に気をつけないといけないことが多いことも忘れてはいけません。
男性と比較して、体に対して様々な警鐘を感じやすいのが女性の体です。女性の方が寿命が長いのも、そうしたことと関係があるのかもしれません。
今でも、100年以上の歴史を持つ中医学の婦人科の流派は残っており、ざっと挙げてみても朱氏・蔡氏・陳氏・何氏など10あまりの流派が上海にあります。それだけ、昔から婦人科と中医学との関係は密接です。
私も、日頃の診察で感じているのは、日本人・中国人に限らず、女性の生理に関する問題を抱えている方が増えているという点です。とくに、学歴が高くて収入が高く、仕事をバリバリとこなす女性に多く、調査では上海の女性の場合、生理不順のほか、生理痛を含む月経困難症などの諸症状を抱えている人の割合が、7割程度にも及ぶということです。背景には、様々な影響による卵巣の機能低下とも関わりがあるとも言われています。
そうした中、ストレスが大きな原因だとも考えらていますが、流産の経験があったり、ダイエットをやったことがあったりすることとも関係があったりします。
婦人科では、中医学や漢方医学の活用が有効なことが多いですが、十分な睡眠と、飲食のコントロール、心理的な安定など薬以上に気をつけないといけないことが多いことも忘れてはいけません。
男性と比較して、体に対して様々な警鐘を感じやすいのが女性の体です。女性の方が寿命が長いのも、そうしたことと関係があるのかもしれません。
2010年08月19日
生薬の流通と価格の問題
中医学をやっていて、何かと気になるのが中医薬とも呼ばれる生薬の流通と価格の問題です。都市化してしまった上海エリアは残念ながら豊富な生薬資源があるわけでもなく、また、地域によって生薬の特産が異なるため、中国各地から輸送されてきます。私たちのクリニックにとっても、生薬の動向はやはり気になります。
たとえば、上海周辺では杭州周辺で収穫される杭菊花なんかが有名ですね。風邪の初期や頭痛、目の充血や解毒、皮膚炎などの治療に使うのですが、こういった生薬は農作物であるだけに、天候や市場の動向に値段が大きく影響をうけます。
最近では、太子参の値段の動向が大きい。不眠症や虚弱体質、食欲不振、健忘症、夏ばて対策などに使われることが多く、中医学的には気や陰を補う作用があることから、子どもの疾患にも便利で、長引く咳の治療にも使えるのですが、これがいま値上がりしています。太子参自体、保存が難しい生薬の一つだけに、影響を受けやすい。
太子参の産地は福建省柘栄や貴州省施秉などなのですが、干ばつと大雨の影響で50%近く減産となり、根ぐさりしてしまったものも出始めてしまっています。天候の影響というのは恐ろしいもので、予想がつきにくいだけにある程度覚悟はしておく必要があります。少なく見積もっても、中国全国で30%程度の減産となり、2010年の収穫高は3500トン前後になりそう。
一方で、雲南省・四川省・貴州省などの山地が産地で、「金不換」という異名をもつ貴重な生薬の一つでもある田七。痛み止めや血の巡りをよくする活血の作用があり、重宝します。三七とも呼ばれますが、3〜7年間栽培されたものが良いとされているため、長いスパンでの栽培となります。ところが、全国で97%の三七を栽培している雲南省で大干ばつ、こちらも価格が上昇しており、在庫もだんだんと底をつき始めています。となると、必然的に値上げです。
さらに、最近心配されているのが余った資金が生薬市場に流れ込み、投機的な値段変動を起こすのではないか、という点です。そうなると、金儲け目的の値段変動となり、ますます頭が痛い。
大都市・上海で生活していると、こうした自然の変化に対して鈍感になってしまいますが、中医学や漢方そのものは、自然と密接な関係があるため、私もある日、この地球の変化にはっと気がつかされる思いをします。
たとえば、上海周辺では杭州周辺で収穫される杭菊花なんかが有名ですね。風邪の初期や頭痛、目の充血や解毒、皮膚炎などの治療に使うのですが、こういった生薬は農作物であるだけに、天候や市場の動向に値段が大きく影響をうけます。
最近では、太子参の値段の動向が大きい。不眠症や虚弱体質、食欲不振、健忘症、夏ばて対策などに使われることが多く、中医学的には気や陰を補う作用があることから、子どもの疾患にも便利で、長引く咳の治療にも使えるのですが、これがいま値上がりしています。太子参自体、保存が難しい生薬の一つだけに、影響を受けやすい。
太子参の産地は福建省柘栄や貴州省施秉などなのですが、干ばつと大雨の影響で50%近く減産となり、根ぐさりしてしまったものも出始めてしまっています。天候の影響というのは恐ろしいもので、予想がつきにくいだけにある程度覚悟はしておく必要があります。少なく見積もっても、中国全国で30%程度の減産となり、2010年の収穫高は3500トン前後になりそう。
一方で、雲南省・四川省・貴州省などの山地が産地で、「金不換」という異名をもつ貴重な生薬の一つでもある田七。痛み止めや血の巡りをよくする活血の作用があり、重宝します。三七とも呼ばれますが、3〜7年間栽培されたものが良いとされているため、長いスパンでの栽培となります。ところが、全国で97%の三七を栽培している雲南省で大干ばつ、こちらも価格が上昇しており、在庫もだんだんと底をつき始めています。となると、必然的に値上げです。
さらに、最近心配されているのが余った資金が生薬市場に流れ込み、投機的な値段変動を起こすのではないか、という点です。そうなると、金儲け目的の値段変動となり、ますます頭が痛い。
大都市・上海で生活していると、こうした自然の変化に対して鈍感になってしまいますが、中医学や漢方そのものは、自然と密接な関係があるため、私もある日、この地球の変化にはっと気がつかされる思いをします。
2010年08月14日
ニキビ治療薬のアキュテイン(ACCUTANE)に関する副作用問題
中医学・漢方で、治療に来られる患者さんが多いニキビの治療です。弁証するときには様々なパターンに分けられ、ある一定のグループのニキビは治しやすいのですが、頑固なパターンもあり、こちらは生薬+外用生薬でも四苦八苦することがあります。
さて、うちでは使っていませんが、中国でニキビの治療に使われることもある西洋薬、アキュテイン(ACCUTANE)(中国名:異維A酸)に関して、中国国家薬品不良反応監測センターが副作用に関する情報を出して、市民に注意を呼びかけています。
アキュテインの本来の働きは、皮脂腺(ひしせん)の活性を抑え、上皮細胞の角化抑制するなど、ニキビの総合的治療には良さそうなのですが、副作用として子どもに奇形をもたらしたり、逆に皮膚の状態を悪化させ、皮膚の乾燥・痒み・唇の乾燥などのひどい皮膚炎の症状を引き起こし、さらに頭痛や眠気など精神的な反応も出てくることが指摘されています。
この薬自体は、日本の厚生労働省の認可を受けていないので、日本では処方されることはないと思いますが、すでに開発されて20年以上の歴史をもち、中国では薬局などで外用薬・内服薬ともに手に入ります。
しかし、その中国でも、2004年〜2010年7月15日までに259例の副作用の報告が出されていて、このうち4例に関しては重症ということです。よって、今回、当局が注意を促しています。
さて、うちでは使っていませんが、中国でニキビの治療に使われることもある西洋薬、アキュテイン(ACCUTANE)(中国名:異維A酸)に関して、中国国家薬品不良反応監測センターが副作用に関する情報を出して、市民に注意を呼びかけています。
アキュテインの本来の働きは、皮脂腺(ひしせん)の活性を抑え、上皮細胞の角化抑制するなど、ニキビの総合的治療には良さそうなのですが、副作用として子どもに奇形をもたらしたり、逆に皮膚の状態を悪化させ、皮膚の乾燥・痒み・唇の乾燥などのひどい皮膚炎の症状を引き起こし、さらに頭痛や眠気など精神的な反応も出てくることが指摘されています。
この薬自体は、日本の厚生労働省の認可を受けていないので、日本では処方されることはないと思いますが、すでに開発されて20年以上の歴史をもち、中国では薬局などで外用薬・内服薬ともに手に入ります。
しかし、その中国でも、2004年〜2010年7月15日までに259例の副作用の報告が出されていて、このうち4例に関しては重症ということです。よって、今回、当局が注意を促しています。
2010年08月12日
上海の救急車
中国では、電話番号「120」で救急車を呼ぶことになっています。上海で猛暑が続き、体調を崩す人が続出、上海ではこの時期1日平均で750回も出動していて、多い時は1日に1000回近くも出動しているということです。
そこで、上海市衛生局では、スムーズに救急車が稼働できるように、いくつかの方針を打ち出しています。
まず、伝染病や精神病、中毒ややけど以外の疾患では、基本的に近くの二級、三級総合病院に送ることにしています。また、患者が搬送されてきた病院側も、救急車を断ることができず、救急車が到着したら10分以内に患者をおろして、病院側に引き継ぐことが決められています。
そうすることで、救急車は次の任務へ出発することができますし、病院も迅速な対応が求められます。もし、出来なければ衛生局から批判されることになります。
一方で、一部家族が遠くの病院に搬送することを求めるケースがあるようですが、原則認めないと言うことなので、かかりつけの総合病院がある場合は、やはりタクシーなどを利用した方が無難かもしれません。
なにより、上海の交通事情をみて分かるように、自動車教習所のテキストでは、救急車は優先とあるのに、実際には救急車の存在にすら気がつかないドライバーが多いのが現状です。これは明らかにルール違反だけに、ドライバーのモラル向上が求められます。
そこで、上海市衛生局では、スムーズに救急車が稼働できるように、いくつかの方針を打ち出しています。
まず、伝染病や精神病、中毒ややけど以外の疾患では、基本的に近くの二級、三級総合病院に送ることにしています。また、患者が搬送されてきた病院側も、救急車を断ることができず、救急車が到着したら10分以内に患者をおろして、病院側に引き継ぐことが決められています。
そうすることで、救急車は次の任務へ出発することができますし、病院も迅速な対応が求められます。もし、出来なければ衛生局から批判されることになります。
一方で、一部家族が遠くの病院に搬送することを求めるケースがあるようですが、原則認めないと言うことなので、かかりつけの総合病院がある場合は、やはりタクシーなどを利用した方が無難かもしれません。
なにより、上海の交通事情をみて分かるように、自動車教習所のテキストでは、救急車は優先とあるのに、実際には救急車の存在にすら気がつかないドライバーが多いのが現状です。これは明らかにルール違反だけに、ドライバーのモラル向上が求められます。
2010年08月10日
多様化する在上海日本人
うちの鼎瀚(ていかん)中医クリニックに来られる様々な患者さんをみていると、この上海における日本人社会の多様化に気づかされることがあります。
もともと、私がローカルの病院にいてたころは、中国人の患者さんを診察することが多く、地元の方が大部分だったので、当然さまざまな世代の方が来られていたのですが、これと同じ傾向が最近の日本人の患者さんのなかでもあります。
上海に在住する日本人でも、私が診察している最高齢の方は90歳を超えていますし、生まれて数ヶ月の赤ちゃんも含めると、その年齢層が非常に厚いのです。特に、最近は退職後に上海に来られる方も多く、年齢層が高くなる傾向にあるように思います。いずれにしろ、上海の街があらゆる層の日本人にとっても住みやすくなった証拠だとも言えます。
私よりもはるか年齢の高い人生の先輩に、診察室でお会いできることは、私にとってもまさに「一会一期」であり、逆に色々なことを学ばせていただいております。
私自身の経験を踏まえながら、何かお役に立てることができないか考える今日この頃です。
もともと、私がローカルの病院にいてたころは、中国人の患者さんを診察することが多く、地元の方が大部分だったので、当然さまざまな世代の方が来られていたのですが、これと同じ傾向が最近の日本人の患者さんのなかでもあります。
上海に在住する日本人でも、私が診察している最高齢の方は90歳を超えていますし、生まれて数ヶ月の赤ちゃんも含めると、その年齢層が非常に厚いのです。特に、最近は退職後に上海に来られる方も多く、年齢層が高くなる傾向にあるように思います。いずれにしろ、上海の街があらゆる層の日本人にとっても住みやすくなった証拠だとも言えます。
私よりもはるか年齢の高い人生の先輩に、診察室でお会いできることは、私にとってもまさに「一会一期」であり、逆に色々なことを学ばせていただいております。
私自身の経験を踏まえながら、何かお役に立てることができないか考える今日この頃です。
2010年08月05日
健康医学 2010年8月号「アトピー性皮膚炎と中医学による治療の考え方」を執筆しました

今回の『健康医学』にはアトピー性皮膚炎の治療について、日々私がいろいろやっていることをご紹介しました。
日本では80年代前後から漢方を使ってのアトピー性皮膚炎の治療が積極的に行われてきましたが、中国(上海)では症例数そのものがあまり多くなかったため、むしろ最近になってからいろいろいわれ出してきたように思います。
ただ、発病のメカニズムに関しては、中医学ならではの発想もあり、それが特色として今でも治療に活かされています。そんなことをいろいろ書いてみました。中医学の強みは、生薬などを使った内服薬と外用薬をいかに上手に組み合わせるか、だと思います。
夏になって、特に連日35℃を超えるような上海の気候では、皮膚のケアが非常に難しいのもまた事実です。温度差で皮膚の状態を悪化させてしまう場合も見受けられます。
すこし中医薬の生薬のお話が濃くなってしまいましたが、そんなところを読んでいただけたらと思います。
この毎月連載の中医学記事、2011年度も執筆することになりました。よろしくお願いします。