2009年12月27日

風邪かなと思ったら。。。。

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 どうでしょう?皆さん風邪かなと思ったら、ご自宅にどのような常備薬をお持ちでしょうか。

 私も患者さんといろいろ交流していると、日本人の場合、圧倒的に多いのが葛根湯(葛根5.0;麻黄・大棗各4.0;桂枝・芍薬・生姜各3.0;甘草2.0)。これは完全に日本漢方と中医学との違いともいえる発想と思うのです。
 もちろん中医学でも葛根湯は使いますが、日本のようにガンガン使うことはありません。
 その証拠に、中医学の本場の上海に来られても、葛根湯は自分で処方でもしない限り簡単に手に入りません。

 では、中国人の患者さんに同じような質問をすると、よく聞かれるのが「午時茶」。あ、某飲料メーカーが作っている「午後ティー」じゃあありませんよ。

 ティーパック型の中成薬として売られていることが多いですが、中身は蒼朮・柴胡・羌活・防風・白芷(ビャクシ)・川芎(センキュウ)・藿香(カツコウ)・前胡・連翹・陳皮・山査子・枳実・麦芽・甘草・六神曲・桔梗・紫蘇・厚朴・紅茶となっています。

 紅茶もちゃんと入っているんですが、生薬がこれだけ入っているとさすがにおいしいものではありません。

 効能は解表和中で、主に風邪のなかでも寒系の風邪に使うことが多いです。風邪で下痢など胃腸の調子が悪いときも使えます。解表なので、どちらかというと風邪の引きはじめが良さそう。

 市内の薬局で普通に売っていますので、自宅に一つ常備しておくと便利です。私は自分の体質的に午時茶派ですね。
posted by 藤田 康介 at 07:22| Comment(2) | TrackBack(0) | 生薬・漢方薬・方剤・中成薬

2009年12月26日

柯雪帆先生が亡くなられました

 また、中医学の権威の先生が亡くなられました。

『傷寒論』の研究では、日本でもその名が知られている柯雪帆先生が、11月10日に82歳で亡くなられました。上海中医薬大学の傷寒論研究室で教鞭も執られておられましたが、1997年に病気で退職されており、私は直接教わってはいません。

 しかし、その後、ご縁があってたびたび先生のお宅にお邪魔させていただいたことがあり、控えめで温厚な先生の人柄に私もすっかりと引き込まれてしまいました。

 最近、中国の中医学の世界では、有名な先生方が次々とご高齢のため亡くなっておられます。私が上海中医薬大学の医学部で勉強してたとき、本当に多くの先生方の指導をうけましたが、多くの方は退職されてしまいました。考えてみれば非常にラッキーなわけで、私が中国で勉強・研究してきた最高の財産です。

 ご冥福をお祈りいたします。
posted by 藤田 康介 at 13:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 雑感もろもろ

爪剥離症(爪甲剥離症)

 最近、立て続けに3例の爪剥離症(爪甲剥離症)と診断された患者さんを診察し、このうち2例の患者さんに関しては生薬治療の家庭で爪がすこしずつ根っこの部分からくっついてきています。2〜3週間で1ミリ程度ですが、着実にちゃんとした爪が伸びてきています。

 私も、この症状に関してはあまりたくさんの症例はありませんが、中医学や漢方が効くのでは?と思うところがあり、ブログに記録しておきます。

 西洋医学的な説明はここでは書きませんが、爪の疾患に関しても、中医学や漢方でも一定の考え方があります。

 爪は、中医学では「筋」の一部と見なします。中医学では、人間の体の構成は、五臓六腑以外にも皮毛・肌肉・血脈・筋腱・骨格という5つの要素、すなわち「五体」で形成されていると考えます。日本語の「五体満足」もここからきているの言葉なのですが、これらそれぞれが五臓とつながっているのです。たとえば、皮膚なら肺、肉なら脾、血脈なら心臓、そして筋なら肝といった感じです。

 アトピーの治療で、必ず肺系に属する生薬を使いたくなるのも、肺と皮膚が密接に関係しているからなのです。

 そこから考えると、爪甲剥離症の治療では、やはり肝・胆がポイントとなることがわかります。単なる爪の疾患としてとらえるのではなく、体の中から治そうと考えるのは、中医学・漢方の定石ですよね。

 爪の様子は健康を示すバロメーターであることは、皆さんご存じのとおりです。たとえば、爪が薄く、そりあがってしまうような場合は肝血不足と考えますし、爪を強く押して白くなった状態からなかなかピンク色にならなければ気血が不足していることになります。冷えが強く、陽虚の人ならば、爪の色も白っぽいです。

 ただ、体の中からだけでは、やはり生薬が直接的に作用しにくいので、生薬外用薬も可能なら併用してみたいところ。私もいろいろ試行錯誤しながら考えています。 
posted by 藤田 康介 at 12:49| Comment(2) | TrackBack(0) | 中医学と皮膚病

2009年12月24日

脂肪肝と山査子

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新鮮な山査子が上海の市場などで出回っていますね。我が家でも妻が買ってきていました。生薬でもよく使う山査子は、竜華医院の腎臓内科にいた頃、私の中医学の師匠である陳以平教授と研究したときに、尿酸値を下げる生薬の実験で使いました。

 山査子の真っ赤な果実からイメージできるように、山査子はいわゆる「血」にも作用し、活血散瘀の働きがあり、産後の腹痛や鼠径ヘルニア、大腿ヘルニアなどの痛みにも使います。

 でも、山査子の最も代表的な作用は、肉の食べ過ぎによる消化吸収を助けることです。山査子を粉にして、食べ過ぎによる下痢・腹痛の治療にも使います。山査子は非常に酸っぱいのですが、豊富な有機酸が、酵素の働きを助けてくれます。
 最近では、高血圧や高脂血症、心筋梗塞などの治療にも使われる山査子は、コレステロールの転化を助け、血管を拡張し、冠状動脈の血流を増大させるなどの作用が報告されています。

 そんなわけで、中医学や漢方の生薬の世界では山査子はものすごく重宝します。

 そのほか、脂肪肝にいい食べ物として、動脈硬化を防止し、血栓予防の作用があるタマネギ、善玉コレステロールを高め、血糖値を下げる作用のあるニンニク、牛黄酸を豊富に含み、植物繊維を豊富に含む海藻も脂肪肝にいいとされています。

 中華料理でよく出てくるヨウサイ(空心菜)も中性脂肪やコレステロールを下げる働きがあります。(道理でよくでてくるわけだ。。。)

 冬になると急増する便秘の患者さんですが、腸内の脂肪や老廃物を出すためにもサツマイモはお勧め。サツマイモの繊維質が腸内の水分を吸収して、腸壁を潤滑にすることができます。便通をよくして脂肪肝を防ごうという発想です。

 そのほか、なすびは糖尿病による脂肪肝にもいいと言われたりしています。

 脂肪肝の方には、朝にエン麦を食べることも勧められています。エン麦はリノール酸やサポニンを豊富に含み、中性脂肪やコレステロールをさげてくれる働きがあります。

 こう見てみると、身近で脂肪肝に良さそうな食べ物は多そうですね。
posted by 藤田 康介 at 17:39| Comment(2) | TrackBack(0) | 中医学の薬膳・医食同源の世界

中医学をやっている最大の喜び

 半年ほどかかりましたが、また一人生薬服用を止めることができそうな患者さんが出てきました。うれしいです。

 思えば半年前、様々な問題を抱えて、私のところを訪れてくださりました。中医学というのは患者と接するチャンスが非常に多いので、どの患者さんも初診のときの様子は頭の中に克明に記憶されています。
 あれからいろいろ試行錯誤をしましたが、おかげさまで問題となった症状がほぼ解決し、いまいつ漢方薬(中医薬)の煎じ薬を止めるか慎重に頃合いを見計らっています。

 当分は1日1回服用にし、2日1回服用ぐらいにまでなれば、完全に漢方薬の服用を止めてしまうのも時間の問題です。

 患者さんの顔がはつらつとされていました。

 こうやってまた一人元気になってくださる人が出てきて、そして患者さん自身も新しい生活をチャレンジしようとがんばられる姿をみて、私もエネルギーをもらったような感じがします。

 体だけでなく、こうやって気持ち自体ががらりとかわってしまった患者が少なくありません。そういった意味でも中医学や漢方はすごいと改めて実感する今日この頃です。

 少し寂しいですが、それでも元気になって私のところから離れてくだされれば、医者として本望です。
posted by 藤田 康介 at 06:05| Comment(0) | TrackBack(0) | 雑感もろもろ

2009年12月21日

顔徳馨先生の処方とまたばったり

 顔徳馨先生と縁があるのか、私もよくわかりませんが、先日お話しした顔徳馨先生の処方をもって、また違う患者さんがやってきました。
 どうやら、顔徳馨先生が市内の薬局のイベントに出られ、そのときに患者さんにチャリティーで処方をされたようです。そうでもないと、なかなか先生の処方をみることはできません。
 90歳のご高齢にかかわらず、ご苦労様です。

 今度は、ストレス性の慢性の下痢のようです。せっかくなので、また処方を紹介させていただきます。

 党参10 蒼朮12 砂仁6 茯苓10 呉茱萸3 炮姜3 防風10
 陳皮6  白芍10 葛根10 黄芩6 知母10 川萆薢15 丹参15
 川芎10 車前草30

 この処方も生薬の量は控えめです。葛根黄芩黄連湯や痛瀉要方など名処方がちらほらしています。
 車前草とはオオバコのことです。ここでは、種だけでなく生薬全体をつかっています。もともと利尿作用てきな働きがあるのですが、尿をたくさん出させて下痢を止めるという「湿性泄瀉」の治療ではよく使います。そのほか、目の痛みや赤み、黄色い痰が出るような咳などにも使われます。

 呉茱萸 炮姜なんかも出したくなる組み合わせですね。で、ここで滋陰降火作用のある知母と解毒+利湿作用のある萆薢を併用。萆薢は、湿系の「おりもの」の治療にも使ったりします。

 服用された患者さんから、また効果を聞いてみます。
posted by 藤田 康介 at 06:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 脈案考察

2009年12月20日

いろいろな先生方のと出会い

 中医学をやっていて、よかったな!と思うのは、やはり患者さんとの出会いと、様々な世界で活躍されている医師との出会い。

 先日は、大分県の別府で開業されている木村クリニックの石束先生と再会。2年前の上海研修でお知り合いになり、その後別府で行われた日本温泉学会でも再会、さらに今回は上海でも再々会できました。

 中医学をやってらっしゃる若い西洋医の先生方が、日本でも最近増えてきています。心強い限りです。

 お互い情報交換をして、切磋琢磨できたらと思っています。この日は、夜遅くまですっかり話し込んでしまいました。

 さらに、先週は上海日本人医師会の会合も。日本から新たに上海に来られた先生方ともお知り合いになれ、大変収穫のあった会合でした。

 最近、中医学での人とのつながりが急速にできつつあります。楽しみです。
posted by 藤田 康介 at 08:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 最近の活動

顔徳馨先生の処方と黒豆

 中国では、中医病院にやってきて、いつも服用している薬だけを処方にこられる患者さんが少なくありません。患者さんの意志で来られているので、普通は処方を写してあげるのですが、時には日頃滅多に出会えない超有名な先生の処方を持ってこられる方もおり、私もしっかりと勉強させていただきます。

 今回みたのは、中国の中医大師で、上海市名老中医でもある顔徳馨先生の処方。先生は今年90歳。まだまだ現役で患者さんを診察しておられます。
 やってこられた患者さんは70歳前後の女性で、血圧が高く、のどの渇きや盗汗を主訴として訴えていました。

 出された処方は、

桑葉6 鈎藤18 生地10 女貞子10 黒豆衣10 黄連3 枳殻6
半夏10 澤瀉30 桂枝2 陳皮6  青皮6  茯苓10 車前子30
懐牛膝30 甘草5 荷葉10

 と非常にシンプルなものでした。

 この中で、私ならきっと思い浮かばなかった生薬として黒豆衣がありました。
 これは黒豆の外側の黒い皮のことです。主な効能として、養血平肝・滋陰止汗となっています。陰を補うところから、盗汗の治療に使われます。地骨皮や浮小麦などと組み合わせるのもよさそう。

 皮だけでなく、正月でおなじみの黒豆も薬膳の世界ではよく使われるモノで、補腎の作用があることから、腰や膝のだるさ、浮腫などの治療に使うほか、肌の美白効果があるともいわれているのです。肌をよくするという意味ではよく使われます。あと、解毒作用もあり、中毒になったときなども使います。

 これから正月によく食べる黒豆。「黒」という色からもわかるように、寒い冬の体を養うのにはもってこいの生薬(食材)です。ちなみに、黒豆は中国ではよく馬の飼料に用いられていて、「馬料豆」ともいわれていました。
posted by 藤田 康介 at 08:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 脈案考察

2009年12月19日

上海の民間クリニック・外資病院のランキング制定へ

 中国では、公立・国立病院に関しては、病院のランキングを非常にはっきりさせています。地域医療を担う1級病院から総合病院として研究や研修も受け入れる3級病院まで、級によって役割も違いますし、診察料も変わってきます。

 ただ、最近では民間資本のクリニックや外資による病院も上海で増えてきており、そうした医院の評価についてどうするか?まだ明確な結論が出ていませんでした。

 そこで、上海市では上海医療衛生体制改革の一環として、2010年度中に民間医院、外資医院、国有の株式医院など1000カ所(このうち病院165カ所、クリニック450カ所、外資系医院22カ所)の医療機関に対してランキングをつけるという試みが行われるということです。中国で初めての試みですね。

 大変結構なことだと思います。

 さらに、上海市では今後、高齢者や身体障害者などのリハビリ、介護などを重点的に扱った病院の設置も行う計画です。たしかに、今の高齢化社会の上海でもっとも不足している施設ですね。これだけ増えてきたお金持ち高齢者が入ることができる施設がまだほとんどありませんから。きっと新しいビジネスが登場してくることでしょう。
posted by 藤田 康介 at 19:01| Comment(0) | TrackBack(0) | 中国の医療事情

2009年12月18日

インフルエンザ予防の中医学的発想 扶正

 先日、上海中医薬大学付属竜華医院の知り合いの先生との会食をしたのですが、竜華病院では、インフルエンザ対策として処方する生薬の基本は、やはり「弁証論治」で、特に決まった処方はない、ということをおっしゃっていました。タミフルとの併用もありでしょう。

 私もインフルエンザの患者さんを何人か診ましたが、重篤ではないかぎり、基本はやはり症状に併せて如何に臨機応変に処方が出せるか、という点だと思います。「麻黄湯」ですべて解決するというわけでもありませんから。場合によっては、銀翹散(芦根15.0;金銀花・連翹各12.0;淡豆豉・淡竹葉・牛蒡子各9.0;薄荷・荊芥・桔梗各6.0;甘草3.0)や麻杏石甘湯(石膏10.0;麻黄・杏仁各4.0;甘草2.0)を使ったこともありました。一概には言えません。

 実際、中国でのインフルエンザ治療では、ほとんどの症例で何らかの中医薬(漢方薬)が使われているわけで、これはある意味非常に意義のあることであるとも思われます。

 予防の基本は、やはり病気の原因となる邪気に対して人間の抵抗力を高める「扶正」と、その邪気を追い出す「祛邪」の2つの力を高めることがポイントです。
中医学の養生的立場から考えると、どのように「扶正」と「祛邪」をするかを考える必要があります。

 「扶正」の基本は、なんと言ってもやはり飲食・睡眠・精神状態・気候への順応性の4つだと思います。食べ物に関しては、刺激物や冷たいものを食べず、野菜・果物をしっかりと摂取し、薄味で偏食をせず、水分をしっかりと撮ることです。適度なタンパク質ももちろん大事です。十分な睡眠で、疲れをとり、適度の運動によって体の気血の循環をよくしなければなりません。徹夜なんかは論外なのですが、こう師走の時期に忙しくなると真っ先に犠牲となるのが睡眠時間というのも悲しいことです。
 
 体の中の気の流れを考えたとき、穏やかな精神状態というのも非常に大切です。精神的に不安定であれば、これも気の流れを見出します。例えば、驚かされたときなど、「はっ」としてしまうのも、実は気の乱れの表現の一つです。楽観的な考え方、積極的な生き方が非常に大切です。

 気候への順応は、おそらく我々現代人がもっとも苦手としていることではないでしょうか。オフィスビルなど冬でも常時暖かい環境におり、今朝もこのくそ寒い天気の中、タイツなども履かずに生足でウロウロしている若い女性をみてびっくりしました。そんな風景が最近の上海では珍しくありません。中国人の養生的考え方はいったいどこにいったのか?と思います。そして、現代社会で忘れてはならないのは気候の異常。春だったら風邪、夏だったら暑邪、冬だったら寒邪、そして秋になると燥邪がでてきますが、そうした通常の邪気以外のものが異常気候などで発生すれば、体がすぐに対応できず、大きな変調をもたらします。そのため、こうした邪気にいかに順応できる体をつくるかという問題も大切なわけです。
 
 こう書いてみると、極めて当たり前のことばかりなのですが、これが意外にも難しい。
 では、祛邪はどうするのか?次回触れてみたいとおもいます。
posted by 藤田 康介 at 18:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 伝染病と闘う

2009年12月11日

経験を伝え、新しい知識を得る

 上海鼎瀚中医クリニックの院長は、私の大学院時代の先輩にもあたり、「伝統的な中医医学をやってみたい」という考えが合致し、私も創立当初からいろいろ協力させていただいております。そして、現在の診療活動に至っています。

 その一環として、お互いの臨床経験を交流しあうという勉強会も診察時間が終わった夜に行っています。
 中医学にしろ漢方医学にしろ、それぞれの医師の考えやクセがあるため、そうした長所を勉強することは、医療技術を高めるためにも非常に大切だからです。

 今回は私が講師を担当する番でして、今回は主に中国人の間にも増加傾向にあるアトピー性皮膚炎の中医学・漢方治療について、クリニックの7人の医師と討論しました。主な症例を取り出して、症例研究をすることもあります。

 「患者さんによいと思うことは何でも取り入れてみよう」というのも、うちのクリニックの考え方の一つでもあり、今回は、日本から健康医学社のスタッフの方に来ていただいて、現代版のすいだま(カッピング)療法ともいえる「バンキー」についても討論しました。中医学の臨床では、すいだまを使った治療はごく一般的で、鍼灸・推拿と組み合わせてよく行います。今では、伝統的な火を使った減圧方法から、機器を使った減圧方法もあり、「バンキー」などは後者の方です。吸引の圧力を一定に保てたり、さらに吸着しにくい部位にも使えるというのは、伝統的な方法では難しく、日本のアレンジ力で解決したのは、さすがと思いました。

 我々の中医学でもカッピングで瀉血(中国語では放血)もよく行うのですが、そうした治療法には各に特徴があります。中医学というテリトリーは、本当に広いものですが、最終的な目標は、疾患を治すということには変わりません。守備範囲が広いだけに、この中医学の理論を使った治療法も多く、少しでも多くの理論に精通する必要があるわけです。

 日頃、私は煎じ薬の処方をメインにしていますが、生薬の効きを高めるにはあらゆる手段を考えなければなりません。そういった意味では、推拿や針灸、さらにカッピングとの組み合わせはまだまだ可能性が広がります。

 機会を見つけて、また研究していきたいと思っています。
posted by 藤田 康介 at 02:25| Comment(0) | TrackBack(0) | 最近の活動

2009年12月10日

生の当帰

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 上海聯洋住宅地にある我が家の近くに、知らない間にCity-Shopが出来ておりました。最近、上海の町歩きどころか近所歩きもあまり出来ていないので、全然気がついていなかったのですが、早速探索に出かけました。この日、そこの野菜売り場で珍しいモノを発見しました。

 そうです。「生の当帰」です。「当帰(トウキ)」は、中医学だけでなく、日本の漢方薬の世界でも非常になじみの深い生薬で、当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)などの名前でご存じの方も多いはず。

 薬用酒などにも使いますし、薬膳の食材としても欠かすことができません。揮発性の油脂分も含み、独特の香りがありますが、この香りの好き嫌いでは、意見が分かれると思います。

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 さて、野菜売り場に当帰が売られていたということは、そうした需要があるからというわけですが、生薬で使う当帰は乾燥した薬材が中心ですので、こうして生でお目にかかることは滅多にありません。しかも、ご丁寧に当帰の根っこの頭の部分、体の部分、しっぽの部分まで3カ所に分けてパックに詰められています。なかなかやるな、と思いました。

 『本草綱目』の当帰の項目に記載があるのですが、頭は止血作用があり、薬効は上方向のベクトルですが、体の部分は養血作用があり、血を補って養う一方、しっぽの部分は血の巡りをよくする活血作用が強く、下向きのベクトルに作用するといわれています。ただ、臨床では全当帰と書いて、当帰全体を使うことが多くなりました。

 当帰は女性の疾患によく使います。補血や活血止痛、さらに潤腸などが主な効能なので、生理不順や月経困難症、便秘にもいけます。
 
 この場合の便秘への作用ですが、下剤として使うのではなく、あくまでも潤しです。特に、高齢者に多い腎虚や血虚による便秘では、使うことが多いです。とすると、この「潤し」がある種の皮膚問題にもいいことがわかります。そうです。美容の世界でもよく使う生薬の一つでもあるのです。

 当帰と黄耆(オウギ)という生薬はよく一緒に使うのですが、そうすると血と気を両方補うことができるので、鬼に金棒ですね。

 血の巡りをよくする、いわゆる活血の観点から、当帰は整形外科の分野でも使います。たとえば、骨折やねんざ、鬱血、うちみなど活用範囲が広く、中医学では「続筋接骨」の作用があるとも言われています。

 ということは、外用にも使えると言うことです。
 アトピー性皮膚炎の治療でよく使われる紫雲膏(ゴマ油・蜜蝋・当帰・紫根・豚脂)なんかにもしっかりと当帰が入っています。アトピー治療に使う生薬膏薬は、私自身もいろいろ調合を検討しているのですが、やはり当帰は欠かせない薬材の一つです。

 当帰の薬膳と言えば、『金匱要略』に掲載されている当帰生姜羊肉湯が思いついてしまうのですが、名前をみるだけで温もりそうですね。「血虚内寒証」で使うのですが、今度ブログの薬膳のコーナーででもご紹介します。
posted by 藤田 康介 at 07:47| Comment(4) | TrackBack(0) | 生薬・漢方薬・方剤・中成薬

2009年12月05日

足湯に足蒸し、温泉大国の日本ならもっとできるような気がする

 2008年夏に別府で行われた日本温泉学会の時、私も発表しに上海から飛びましたが、そこで、別府温泉鉄輪(かんなわ)温泉にある足蒸しを体験しました。
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 これはなかなかいい!体がしっかりとぬくもるし、温泉が豊富な日本ならではの試みだと思います。そこまで出来なくても、足湯程度なら日本の温泉地にも多いですよね。中国では、温泉地の開発がまだまだですが、生薬を使った足浴は盛んです。上海におられる皆さんの中でも、体験された方が多いはず。

 そんな中、先日、お酢健康法などでおなじみの健康医学社から、足湯の中医学的な活用について教えてもらえないかというインタビューがあり、私が活用している範囲でお話ししました。

 生薬の煎じ薬などを活用した足湯による治療法は、私もかなり前から使っています。最近では、下肢静脈瘤の患者さんに使ってみていますが、それ以外にも婦人科やそれこそアトピーなどの皮膚疾患などにも使うことができます。

 せっかくだから、私のブログの読者にも読んでいただけたらとネットを検索していたら、私のインタビューで話した記事がサイトにありました。原文は月刊「健康医学」11月号にあります。(聞き手は成田知栄子様です。)

====以下、私のインタビュー記事の引用です。====

■中国の皆さんは、よく足湯をするという話をききましたが、なぜ、足湯が生活に習慣づいているのでしょうか?
▼藤田医師
中国語では足湯のことを「足浴(ズーユー)」もしくは「洗脚(シージャオ)」とも言います。スーパーなどに行くと、特に冬場に、足湯の道具が売られるほど市民に広く知られています。こうした製品は父母や祖父母など年長者にプレゼントするアイテムとしても人気があります。日常的にお風呂に入る文化がある日本人からすると、なぜ中国人がそこまで足湯にこだわるのか?すこし理解が難しいかもしれません。
 そもそも、上海エリアでは、一般家庭でお風呂に入る習慣というのはあまりありませんでした。マンションなどに湯船として機能できるバスタブを設置している世帯も多くありません。中国北方エリアと違って、もともと暖房設備の整備が不十分であったので、冬に家庭でお風呂に浸かるといったことは一般的ではないというのが現状です。理由はいろいろあります。例えば、冬場にお風呂から上がったときなど逆に体を冷やすリスクを高めますし、シャワーにしても又然りです。しかし、足湯は足を温めても、上半身の衣類を脱ぐことがなく、寒さには対処しやすいというわけです。各家庭には足湯をするための桶やバケツは必ずありますし、庶民的な旅館・招待所(中国の簡易宿泊所のこと)でもよく見かけますね。実際に経験すると分かるのですが、たとえ冬場にお風呂に入れなくても、足さえしっかりと洗い、温めると、リラックスすることができるのです。
 そのほか、高齢者がいる家庭では、今でも子供たちが高齢者の足湯を手伝ったりします。こうした年配者の脚を洗ってあげることが、一種の美徳になっています。足湯が中国人の庶民文化の一つであることは間違いありません。
 もう一つ、興味深い例をご紹介しましょう。上海の隣に位置する江蘇省にある如皋という街は、中国でも長寿で有名なのですが、ここのお年寄りは不思議とお風呂よりも足湯を好むのです。これは、中医学的にも説明できるのですが、お年寄りの多くは、年齢が増すにつれて自然現象的に気・血が不足してきます。冬場にお風呂に入りすぎると、そうした気・血をあべこべに発散してしまい、よくないと考えます。お風呂で汗を極端にダラダラとかくのも中医学的には問題なのです。私の患者さんでも、お風呂に入ると疲れるとおっしゃる方がおられますが、そういうときこそ足湯を効果的に使うように指導しています。

■中医学の分野では、足は、健康にどう関わりがある部位なのですか?
▼藤田医師
 最近、日本でも足裏マッサージをしてくれるところが増えました。中国ではかなり前から隆盛しています。医療というより、健康維持的な目的で、一般市民からもこうした足のケアは重宝されています。そもそも足の裏には、体全体に関係する経穴がありますし、反射区もあります。よって、お湯に足を浸すことで、こうした部位を刺激し、全身の血の巡りをよくするほかにも、新陳代謝を促進することができます。有名なところでは、足の裏の反射区の痛みの部位からどの五臓六腑に問題があるのかを推測することなどはよく見かけますが、注意しないといけないのは、あくまでも体のほかの症状を鑑みて総合的に判断しないといけないということです。痛みがあるから絶対的にそこに問題があるというわけではないのです。

■中医学では足湯を治療にとり入れているとききましたが…。
▼藤田医師
 内科・外科・整形外科・皮膚科・婦人科・小児科など中医学の各科で足湯は活用されます。特に、生薬煎じ薬を使った足湯の場合、皮膚からの生薬成分の吸収が促進されますし、皮膚温度の上昇から毛細血管が拡張し、血液やリンパの循環が改善されます。
また、細菌や真菌などの感染症の場合でも、患部に直接作用して治療効果を高めます。こういった観点からも、偏頭痛やめまい、急性の鼻炎、高血圧などの内科的な疾患、水虫やあかぎれ・しもやけといった皮膚疾患、関節や足の痺れなどの治療にも使えます。疾患の治療の場合は、健康維持法の足湯とはまた違って、他の治療方法と併用しながら医師の指導の下で使うということが多いです。

■風邪やインフルエンザは、足湯で対処できますか?
▼藤田医師
 中華系では、台湾などの中医学でも足湯をつかって風邪の予防や治療を行うことはよくあります。この場合は、かなり熱めのお湯を使って、汗をかかせるのが目的ですが、風邪の引き初めでしたら、汗をかいて体の表面にある邪気を体の外に出さなければならないと中医学では考えます。内服生薬(漢方薬)と併用すると、その効果はさらに高まります。
 中国でも問題となっている新型インフルエンザですが、こちらでは、かなり前からタミフルに頼らずに中医学の生薬を使って治療しようとする試みが行われ、成果が出てきています。一般的な内服生薬のほかにも、うがい薬として生薬を使ってみたり、足湯をしてみたりすることも行われています。
 例えば、SARS治療で、中薬(漢方薬)治療での実績を高めた広東省中医院では、新型インフルエンザで38℃以上の熱があっても汗が出ない場合は、生薬を使った足湯を行っています。中医学の治療法の一環としての足湯の必要性は、今回の新型インフルエンザに対しても認識されています。

■足湯をする際に気をつけることを教えてください。
▼藤田医師
 まず、足湯のあと、足はすぐに拭くようにしてください。中医学では、病気の原因ともなる邪気が、こうした濡れたときなどに侵入しやすくなると考えますので、しっかりと拭くことが大切です。そのほか、食べたあとすぐの足湯もよくありません。下肢の血管が拡張して胃腸への血液が一時的に減少してしまう可能性があるからです。また、女性の場合は、生理中・妊娠中の時は足湯を控え、医師に相談をしてください。出血傾向にある方も注意が必要です。また、足湯を終えたあとは、すぐに活動せず、できることなら30分程度ベッドなどでリラックスすることも大切です。さらに治療目的で生薬を使って足湯を行う場合は、皮膚にアレルギー反応がないか、注意するようにしてください。また、足に外傷などがあるときも足湯の可否は医師の指導に従ってください。

■効果的な足湯法を教えてください。
▼藤田医師
 足湯に関しては、おそらく皆さん様々な方法で実行されているのではないでしょうか。私のやり方もぜひ参考にしてみてください。一般的に、深めの容器をつかって脛ぐらいまで40℃程度のお湯を入れます。底が平らでゆったりとした容器が理想です。私は煎じ生薬を活用しますので、患者さんの疾患によって処方を変えます。煎じ薬を使う場合は、予め生薬を煎じておいて煮汁を入れます。そして20〜30分ぐらい足を浸けます。温度が冷めてくるので、できたら途中で1回ぐらいお湯を交換できたら理想です。こうやって足を温めたあと、さらに足裏のツボなどをマッサージなどで刺激してあげるとさらに効果的です。

=====引用ここまで========

 最近、日本の温泉旅館さんからも、伝統医学と温泉地をなんとかコラボできなか?という相談を時々受けます。レジャーだけでなく、日本漢方の考えに基づいた、新しい温泉利用の仕方を探してもいいように思うのです。

 足湯の活用方法、温泉の問題も含めて私もいろいろ研究してみたいと思います。
posted by 藤田 康介 at 15:29| Comment(1) | TrackBack(0) | 伝統医学と温泉

上海で初めて発生した新型インフルエンザによる死者・妊婦の無償のワクチン接種が可能になるかも

 上海でもついに出てしまいました。11月27日に徐匯区の第六人民病院で新型インフルエンザと確認された60歳の男性が、12月5日の未明に亡くなりました。上海では初めての新型インフルエンザによる死者です。

 上海では、12月4日現在で報告されている新型インフルエンザ患者数は累計で2123人となっていますが、人口2000万人の大都市だけに、潜在的にはもっと患者がいます。重症例は36例です。

 今回の死者について、その死因は肺塞栓です。肺塞栓は死亡率が高く、20%前後ともいわれています。重篤な場合は、数分以内に亡くなってしまうことも。

 当局の発表では、一時期様態は安定していたようですが、心臓から動脈を詰まらせる原因物質が肺へいってしまって塞栓を形成、数時間後に死亡したということです。

 60歳と言うことで免疫力の低下も考えられますし、様々な要因が重なった結果でしょう。

 そして、もう一つ上海の対策が打ち出されました。ようやく、妊婦に対しても無償の新型インフルエンザのワクチン接種が行われる見通しです。私も含め、医療関係者は新型インフルエンザのワクチン接種を終えましたが、妊婦に対してはまだでした。

 これまで、妊娠15週以上の妊婦では、新型インフルエンザによる死亡率が高いことがわかっており、要注意なのはご存じの通りです。
 上海市でも、妊娠末期の妊婦は早めに出産し、いったん感染したらタミフルなどの薬をすぐに服用するように呼びかけています。こうした妊婦に対しても新型インフルエンザのワクチンが無償で接種されることは、非常に大切です。
posted by 藤田 康介 at 09:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 伝染病と闘う

2009年12月04日

読売新聞に登場しました

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 今まで、ケ鉄涛先生とか、自分自身が記者として有名な先生のところへお邪魔して、いろいろなお話を伺うことが多かったのですが、今回は、私自身がインタビューを受けることになりました。

 そして、私がしゃべった内容が書かれた文章を改めて読み、なるほど、このように表現できるのだと非常に勉強になりました。ありがとうございます。

 12月3日木曜日の読売新聞の国際版の国際欄にあるシリーズ「人・世界が舞台」に登場しています。

 「中医の極意を日本へ」とこれまた大きな見出しと、髪型を変えたばかりの私の写真が掲載されてしまいました。妻はお気に入りなのですが、さすがに私は恥ずかしくて。。。

  おかげさまで、私の師匠でもある陳以平先生を始め、多くの方のご指導を受けられたのも、中国に長く生活してきた恩恵です。日本にいては、まず無理だし、そこには中国人ならではの懐深さを感じられます。

 私は、まだまだ未熟ですが、でも自分がやってきたことを、マスコミなどに紹介されることは決して厭いません。中国政府や上海市に奨学金を十年近く頂いてきた以上、こうやって日本に向けて中医学のなにがしを紹介できることは、ある種の恩返しだとも思っていますし、しなければならないとも思っています。

 そして、なによりも私がやっていることが、少しでも中国人や日本人の患者さんに役立てば、それが本望だと思っています。

 でもあとしばらく、妻と一緒にここ中国で実力を蓄え、日本だけでなく、将来は世界の西洋医学とも対等に渡り合えるようなそんな中医学の医師になりたい、と思って日々臨床に臨んでいます。

 これからもがんばっていきますので、よろしくお願いします。
posted by 藤田 康介 at 23:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 最近の活動