2017年10月12日

中医薬や漢方薬の苦み

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(単味エキス剤の生薬棚)
 中医薬や漢方薬といえば、「苦い」というイメージを持っている方も多いのではないのでしょうか?
 薬草を煮だし、それを1日2回、1回150CC程度の煮だし汁を服用するというのが伝統的な服用方法です。近年では、薬局が代わりに煎じてくれるようになりましたが、それでも味や量は変わりません。液体なので旅行や出張するときは非常に不便です。一方で、日本で漢方薬を服用されたことのある方は、ツムラなどのエキス剤を使っていたかも知れません。量的にも比較的少ないし、持ち運びも便利というメリットがありますが、処方箋は予め決められていて、一つ一つの生薬の微調節が全く不可能なのが大きな欠点です。

 そこで、中国では単味エキス剤というのが発展してきました。中国の医療保険にも徐々に適用されています。うちのクリニックでも数年前から採用していますが、数百種類もの生薬の有効成分を個々に抽出し、単味の粉末のエキス剤として調剤するもので、ほぼあらゆる処方をカバーでき、個々に微調節も可能という便利なものです。

 当然、服用時に煎じる必要なく、お湯に溶かすと煎じ薬が再現され、服用するときは1回1袋の粉末で良いので、一つ一つのエキス剤を混ぜる必要もありません。何よりも大切なのは、農薬や重金属などの検査をパスしており、コンピューターで調剤するために、煎じ薬では難しい生薬の品質の安定化にも貢献しています。

 単味エキス剤を使うようになってから、煎じ薬より服用しやすくなったという声をよく聞きます。子どもでも慣れていたら十分に服用できますので、ちょっとしたカゼや胃腸炎なんかでは十分に即効性もあるので、服用できたら便利です。また数ヶ月の保存も大丈夫です。

 さて、薬が苦いので、砂糖や蜂蜜をいれて服用しています、という声を時々お子さんを持つお母さんから聞きます。実は、伝統医学の考え方からするとあまりお薦めの方法ではありません。甘くしてしまうと、たとえば熱を冷ます作用のある生薬の働きを抑制しますし、生薬の有効成分でもある有機酸や糖類、タンパク質やタンニンを凝固させてしまったりして、功能に影響を与えてしまいます。また、お腹を強くするための働きがある生薬には一定の苦みがあるのですが、この苦みが消化腺を刺激し、功能を発揮するとも言われています。もし苦すぎて服用が難しい場合は、体に合っていないことも考えられるのでぜひ医師にご相談ください。中医学の処方は全体のハーモニーが大切ですので、処方を工夫することで飲みやすくできます。

 また、エキス剤にしろ煎じ薬にしろ飲むお湯の温度は大切です。人の舌は体温ぐらいが一番味覚に敏感ですので、高めなら38℃ぐらいか、低めなら35℃ぐらいかにすることで、苦みを感じにくくなります。ただし、決して冷たいままで服用しないでください。

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2017年09月30日

文旦(ブンタン)の季節〜福建省では本当によく食べられる柑橘類、功能も色々

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  今年の国慶節は、福建省に行ってきました。
 上海からは高速鉄道で福州まで5時間乗り通し、そこからレンタカーをかりて、高速道路を4時間ほど飛ばし、土楼で有名な竜岸が目的地。

 10月の福建省は、上海と比較してもまだまだ暑く、最高気温が35℃を超える日もあり、びっくりしました。とにかく蒸し暑い。そんななか、よく食べられている柑橘類が、文旦(ブンタン)です。中国語では柚子と言いますが、日本の柚子とはまったく違うものです。農家の庭先によく植えられていて、実が大きいので木にぶら下がっている様子は非常に存在感があります。

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 日本でも高知県などでよく食べられているそうですが、私の地元奈良県ではあまり馴染みがありません。でも、中国の上海エリアを含む南方では、非常によく食べられていて、この季節には欠かすことができません。

 文旦の味の特徴は何と言ってもパサパサした食感。私は当初、この食感は美味しくないと思ったのですが、慣れてくると結構クセになります。オレンジなどのように汁が飛ばないので食べやすいですし、甘さもしつこくなく、サッパリした感じです。ただ、皮が分厚いので、剝くのが少し大変かもしれません。

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 文旦は、中医学の世界でもなかなかよく使われる食材です。

私はまず悪阻でしんどい妊婦さんにお勧めしたいです。中医学では伝統的に、悪阻対策の中医薬の処方がいろいろあり、実際に使ってみて効果もあるのですが、この文旦も非常に効果がある食材で、他はダメでも文旦はいけるという患者さんもおられました。実際、中国でも『日華子本草』に、少量の文旦は悪阻に良いという記載もありますので、実際に使われていたことが分かります。

 さらに二日酔いのムカつきにも使えます。基本的に、文旦には食欲を増進し、消化を高める働きがありますので、なにかと重宝な果物です。また、咳や痰にも良いとされ、慢性の痰を伴う咳に使うという中国の農家のお話は地方に行くとよく耳にします。その他、文旦の外側の黄色い皮は咳に効果的です。薄くスライスして、適量の蜂蜜に浸し、蒸すとできあがりです。無駄にするところがないですよね。

 ただし、性質は寒となっていますので、食べ過ぎには注意してください。

 とか言いつつ、思わず文旦を手にしてしまいます。上海では一個30元前後もするのですが、福建省の農家だったら一個2元で分けてくださいました。袋に詰めて、上海までお土産に持って帰りました。

 しかし、中国の南方に行くと果物の種類が豊富になりますね。バナナやパパイヤ、パッションフルーツなどもたわわに実っていて、南国に来たことを実感しました。

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2017年09月07日

浙江省一の薬草生産地、磐安(パンアン)

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 上海のとなりの省、浙江省。

 山や川が豊富で、美しい農村の景色を楽しめるエリアです。私も、上海の雑踏に疲れたら、高速道を飛ばして浙江省の村々を訪れます。人々の暮らしを観察するのも良いですし、美味しい物を食べのもよし。そして、何よりも伝統的な中医学の姿がまだ残っているところも多いです。

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 今回は上海の自宅からクルマを運転すること約4時間半、約330キロのところにある浙江省磐安にまで行ってきました。

 結構な山奥で、それでも今は高速道路が開通しているので、行きやすくなりました。昔の国道も走りましたが、高速道路並にしっかりと整備されていました。

 磐安が有名なのは、何と言っても「中国薬材の郷」と呼ばれるぐらい中国有数の薬草の産地だから。一説によると、1,200種類ぐらい薬草が産出するとか。

 浙江省では、浙江八味と呼ばれる浙江省で収穫される良質な生薬があります。それは白朮・白芍・浙貝母・杭白菊・延胡索・玄参・筧麦冬・温鬱金の八種類を指します。

 そのなかでも時に磐安は有名で、磐安で収穫される五種類の良質な生薬を磐五味と呼び、白朮・元胡・浙貝母・玄参・白芍を指します。特に、白朮・元胡・浙貝母・玄参・天麻に関しては、全国一の生産量を誇ります。

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(浙貝母ですね。)
 例えば貝母ですが、四川省で収穫される川貝母・浙江省の浙貝母・河北省の土貝母の3種類がよく使われます。値段が一番高いのが川貝母。体積が大きいのが浙貝母・褐色しているのが土貝母。私は、上海に近いこともあり、浙貝母を使っています。味からすると、苦みは明らかに浙貝母>川貝母なので、潤す力の強い川貝母と開瀉力の強い浙貝母って覚えました。いずれも痰や咳の治療では欠かせません。
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 磐安では、街全体が生薬の生産や交易に力を入れていて、大きな生薬交易市場もありました。街全体も生薬をテーマにして整備されている感じでした。まだ工事しているとこもチラホラ。

 磐安では中国ではお馴染みの製薬工場も次々と進出しています。

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 生薬はどこで栽培しても良いわけではなく、その栽培に適した土壌・気候が決まっていて、上手くマッチした生薬のことを中国語で「地道的薬材」と呼びます。どこでどれだけ良い生薬を仕入れることができるかが、中医薬局を経営する中医薬剤師の腕の見せどころでもありますよね。

 中国の生薬栽培は全国に広がっています。
 
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2017年08月07日

中医学金元四大家の一人、浙江省義烏の朱丹渓の陵墓を訪れる

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 朱丹渓(1281-1358)といえば、中医学に携わっている人なら知らない人がまずいないぐらい有名な医学者の一人です。中医学の医学者の中では「大器晩成」としても有名で、もともと儒学を勉強し、30歳過ぎから『黄帝内経・素問』を読み、医学の勉強をはじめました。様々な理論を残し、現代の中医学では「相火論」や「滋陰学説」などは大きな影響を与え、日本にも伝えられています。

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 その朱丹渓の陵墓が、出身地の浙江省金華義烏にある赤岩村に残っていると聞いて、早速訪れてきました。
 上海から325キロ、クルマを走らせてちょうど4時間のところでした。現在の住所では、赤岩鎮東朱村の中にあります。

 現代の中国では、高速道路ネットワークが非常によく出来ていて、長距離運転の苦にならなくなりました。

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 朱丹渓の陵墓は、現在は1992年に大きな陵園になっていて、拝観料を支払えば一般の人も拝観できます。

 一応、陵墓の周りは養生公園として整備されていますが、何と言っても見所は大きくて丸い陵墓です。文革で一度破壊されましたが、1979年にオリジナルに修復され、1989年には浙江省の文化財になっています。

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 ちなみに、近くには中国の国の文化財にもなっている古い石橋があり、「古月橋」と呼ばれています。浙江省エリアには多くの古橋があったのですが、洪水で流されたりしてその多くが残っていません。そんななか、800年の歴史をもつ、宋代の橋である「古月橋」。この日は残念ながら修復中でしたが、ひょっとしてあの朱丹渓も歩いたかも知れません。そう思うと、とても身近に感じます。

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 朱丹渓が生活していた赤岩鎮は本当に素晴らしい環境のなかにあります。後ろには大きな山がそびえ、豊かな水もあり、静かな村でした。

 地元では朱丹渓に関する様々なエピソードが伝えられており、庶民に愛された医者だったことがよく分かります。

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2017年03月09日

老中医の健康法

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(江蘇省常熟にて)

 中国での中国伝統医学(中医学)は西洋医学の大学とは別に、中医薬大学があり学生達はそこで勉強し、附属病院で所定の研修を経て医師国家試験に合格し、その後も様々な試験を受けながら一人前になっていきます。その過程でとても大切なのが大学で教わる知識だけなく、師匠となるベテラン中医師、いわゆる「老中医」との出会いです。私も学部時代、院生時代、そして卒業後も色々な老中医に師事しましたが、大学院時代に師事した陳以平教授が今年80歳になられ、今年は私たち弟子が集まって記念論文集を作ることになりました。先生は今もお元気で、腎臓内科の臨床第一線で活躍されています。

 こうした先生方に師事すると、医学に関する知識だけでなく、先生の生き方、さらに将来現役で活躍されているヒントを学ぶことができます。とくに、健康法に関してはとても参考になることが多いです。以前、広東省広州中医薬大学を訪れ、中医学の世界では人間国宝級の認定を受けている、国医大師のケ鉄涛先生にお会いしました。この先生もまだまだ現役で、2016年に100歳を迎えられました。先生に長寿の秘訣を伺ったとき、先生が挙げられた長寿の秘訣の筆頭は運動でも食べ物でもなく「心」であると答えられました。情報が溢れている現代社会、とくに健康情報に関しては本当に色々なものがありますが、先生の仰る「心」とは、中医学でいう「養心」のことで、「徳」を重視し、損することを厭わない余裕のある「心」が大切だと仰いました。そして、その次ぎに大切なのが「規則正しい生活と運動」、最後に挙げられたのが「飲食」でした。

 老中医の健康法をいろいろ整理してみると、やはり「未病を治す」という思想に基づいた「養生」の考え方が非常に大切だと分かります。病気になる前に、如何に予防するか?という観点です。たとえば「心」が乱れそうになったとき、よく使われるのが「書道」です。無心で字を書くことで、心の落ち着きを取り戻すのですが、老中医に書道家が多いことにも納得できます。処方箋を毛筆で書く老中医もおられます。また、太極拳や八段錦も日々よく行われています。こういった健康法は、なにも特別に行うものではなく、中国の日常生活の中でごく普通にあるもので、無理なくできることが特徴ですね。特に二十四式太極拳や八段錦は大学の体育でもやりますし、覚えやすいので皆さんもぜひ中国滞在中にマスターしていただきたいです。

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2017年01月06日

上海市で水ぼうそう流行の季節に入っています

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 空気が乾燥し、気温が下がってくると、上海では毎年水ぼうそうが流行し始めます。
 うちの子供の通っている地元の小学校でも、秋口から水ぼうそう注意するように通知が出されていました。クラスに水ぼうそうの子供が出ると、教室が隔離状態になり、他クラスとの行き来も厳しく制限されていました。

 水ぼうそうは、水痘・帯状泡疹ウイルスによる感染で、急性の呼吸器系伝染病です。空気飛沫感染し、感染力が非常に強いのが特徴です。
  
 ウイルスに初めて感染すると、まず発熱や水痘が発症し、重篤になると脳炎・肺炎・心筋炎などを発症し、厄介なのは治った後でもウイルスは終生潜伏し続けます。そのため、免疫力が下がったときや免疫抑制剤などを使ったときにウイルスの再活性化がおこり、帯状泡疹を発症することがあります。大人でも、子供の時に水ぼうそうに罹ったことがなければ、子供などから感染して、症状が重くなることも多々あります。一方で、帯状泡疹にかかった場合でも、疱疹が完全に枯れてしまうまでは感染力があるので、これも注意が必要です。

 上海市でも予防接種が行われてはいますが、12歳以下はまだ1回接種で、13歳以上が2回接種となっています。上海市のCDCによると、上海市での子供の水ぼうそう予防接種は1995年から行われていて、自費にも関わらず、接種率は93%まで増えていますが、上海市では2013年から水ぼうそうの予防接種を受けていない、もしくは接種後5年以上が経過している子供に関して、流行状況に応じて学校単位での無償予防接種をすすめています。

 最近の上海での傾向として、すでに水ぼうそうの予防接種をしているのにもかかわらず、感染してしまう子供が増えているようで、上海市でも1歳時に接種をしたあと、再度2回目を接種する方向でCDCで検討中とのことです。今のところ、予防接種を受けていて水ぼうそうに罹ってしまった子供の症状は軽いようですが、やはり何らかの対策が必要のようですね。

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posted by 藤田 康介 at 22:45| Comment(0) | TrackBack(0) | 伝染病と闘う