日本で猛威を振るったインフルエンザでしたが、2017年冬〜2018年春にかけての上海でも大流行しました。上海市疾病予防コントロールセンターなどからの情報を整理すると、2017年12月頃をピークにB型山形系統が流行し、ピーク時は患者全体の80%を占め、その後A型H1N1が流行、2月に入ってB型、A型が同じぐらいの割合になったということでした。3月になって、今は比較的落ち着いています。
上海市でB型インフルエンザが流行したの3年以上前、A型H1N1型が流行したのが2年前のことで、とくにB型に関しては一般市民の抗体が下がっていたのが流行の原因とも考えられます。ちなみに、2016年〜2017年に上海で流行したインフルエンザはA型H3N2型でした。
ということで、今年はA型もB型にも2回しっかりと感染したという患者さんが少なくありませんでした。とくにA型H1N1型は症状が結構強く、感染力が強いので、辛かったという声をよく聞きました。
この冬は中国全土でもインフルエンザが流行し、過去3年のなかでも患者数は最も多かったと報道されていました。インフルエンザの予防といえば、日本でもワクチンが知られていますが、なかなか中国国内でのインフルエンザワクチン接種事情はよく分かっていません。ただ、毎年3000万人分のワクチンは出荷されているそうですので、人口から計算するとインフルエンザワクチン摂取率は2%ほどと言われています。都市部と農村部では事情も異なりますし、なかなか複雑。
そのなかでも、興味深いと思ったのはマスコミにも報道された次の研究。
2016年に江蘇省濱海県の幼稚園や託児所におけるインフルエンザワクチンの接種率は12.87%と出ていましたが、内訳をみると特に私立幼稚園のほうが公立幼稚園より接種率が高く、農村戸籍のほうが都市戸籍よりも高く、収入が高くなればなるほど接種率が逆に下がるのだそうです。この傾向について、農村戸籍の親のほうが、学歴が相対的に高いと思われる都市戸籍よりも医師のアドバイスをよく聞き、都市戸籍の親はインフルエンザワクチンに対しての知識を持っているものの、知っている知識そのものに誤解点が多いからではないか、と考えられています。上海で生活していても、中国人社会のなかで、とくに富裕層になればなるほど健康に関する「都市伝説」が非常に多いのもまた事実で、自分から正しい知識をどう獲得するかというのは永遠のテーマでしょう。
さて、中国で中医学を管轄する国家中医薬管理局も、最新版の中医学によるインフルエンザ治療のガイドライン2018年版を発表しました。インフルエンザに関しては、2009年と2011年にも中医学治療のガイドラインを出していて、今回はそれらが基礎になっています。このうち、中医学の治療に関する概要は以下の通りです。
1.軽症:風熱犯衛気・・・疏風解表・清熱解毒 銀杏散+桑菊飲加減
金銀花15 連翹15 桑葉10 菊花10 桔梗10 牛蒡子15
竹葉6 芦根30 薄荷3 生甘草3
加減:舌厚膩ー藿香10・佩蘭10 咳が重いー杏仁10 炙枇把葉10
腹瀉ー黄連6 木香3 咽頭痛ー錦灯篭9 嘔吐ー黄連6 蘇葉10
熱毒襲肺・・・清熱解毒・宣肺止咳 麻杏石甘湯加減
炙麻黄5 杏仁10 生石膏(先)35 知母10 浙貝母10 桔梗10
黄芩15 柴胡15 生甘草10
加減:便秘ー生大黄(後)6 継続する高熱ー青蒿15 丹皮10
2.重症:毒熱壅肺・・・解毒清熱・瀉肺活絡 宣白承気湯加減
炙麻黄6 生石膏(先)45 杏仁9 知母10 魚腥草15 亭歴子10
黄芩10 浙貝母10 生大黄(後)6 青蒿15 赤芍10 生甘草3
加減:高熱が続くー羚羊角0.6、安宮牛黄丸1錠
腹脹便秘ー枳実9 元明粉6 喘促と出汗ー西洋参10 五味子6
毒熱内陥、内閉外脱 参附湯加減
生晒参15 炮附子10 黄連6 金銀花20 生大黄6 青蒿15 山茱萸15
枳実10
3.回復期:気陰両虚、正気未復 沙参麦門冬湯加減
沙参15 麦門冬15 五味子10 浙貝母10 杏仁10 青蒿10 炙枇把葉10
焦三仙10
(以上、流行性感冒診療方案 2018年版より抜粋)
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posted by 藤田 康介 at 00:00|
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