2012年05月17日

中医学の外治法の一つ、香嚢(香り袋)が出来てきました

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 中医学の外用治療の一つでもある、香佩法。

その中でも端午の節句前後からよく使われるのが、香嚢をつかった治療法です。

 袋のなかに、芳香性の強い生薬をいれて、部屋にぶら下げたり、子供の首から掛けたりします。風邪の予防や、各種アレルギー対策など用途が広いですが、小児科の湿疹やアトピー性皮膚炎の治療などにも活用されます。

 元々は厄除けとして使われてきました。中には、白芷や丁香、ヨモギ、蒼朮、藿香など揮発性の強い生薬をいれます。非常にいい香りを漂わせています。

 庶民の文化としての中医学の一つですね。
posted by 山之内 淳 at 09:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 「治未病」という発想

2012年05月16日

蚊に刺されたときはまずは冷やす?!

 ふと見つけた英国の新聞にこんな小さな記事がありました。「Over-the-counter insect bite remedies are just not worth buying , say experts」というもの。ごく普通に蚊などの小さな昆虫類に噛まれたとき、薬局で売られている処方箋の薬はあまり効果は無く、虫さされの痒みをとるには、冷やすことがよいということでした。そのため、医療関係者に対しても、抗ヒスタミン剤やステロイド軟膏は、湿疹などの痒み止めには効果があるが、虫さされには効果がないので、むやみやたらに薬を出す必要はないという専門家のコメントを載せていました。

 中医学の世界でも、虫さされ用の軟膏が色々あります。うちのクリニックにもありますが、要は噛まれたときの痒みを紛らす働きがメインです。冷やす働きが強いのも納得できます。

 
posted by 山之内 淳 at 09:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 中医学と皮膚病

2012年05月15日

AS(強直性脊椎炎)の中医学的治療の研究成果

 再び、中西医結合学会の2011年度科技奨に関しての話題です。
 時々、このブログでも1等賞に選ばれた研究成果を見てきていますが、今回は老中医の経験から、現代医学への研究アプローチを行ったという例です。

 中日友好病院の研究グループが、国家中医薬管理局などの支持を受けながら、十年間に渡って研究を行ってきた『補腎強督法を中心にしたAS(強直性脊椎炎)総合治療法の臨床と実験』です。グループでは、焦樹徳教授の経験に基づき、国の「十一五重点専科診療方案」として重点的に研究が行われてきたテーマでもあります。

 AS(強直性脊椎炎)は、脊椎や股関節、肩の関節などに痛みや腫れなどの炎症反応がおこり、進行すると脊椎が硬直してしまう原因がまだ明らかではない疾患です。

 焦樹徳教授は、ASの中医病名を大僂と命名しています。この言葉は、『黄帝内経・素問・生気通天論』に登場しており、「阳气者,精则养神,柔则养筋。开阖不得,寒气从生,乃生大偻。」とあります。ここからも推測されるように、ASの弁証に関しては、寒熱がポイントとなります。

 そこで、AS治療の理論として、補腎強督を提唱し、中薬治療をベースに、運動・健康教育・西洋医学との併用・外用と内服の活用により、治療案が検討され、現在では国家中医薬管理局の「十一五重点専科診療方案」として採用されています。また、研究によって開発された補腎舒脊顆粒(骨砕補・杜仲・狗脊など10種類の生薬で構成、効能は補腎舒脊・散寒除湿・活血止痛)は、日中友好病院で院内製剤として使われていて、中国国内では唯一のAS治療用の中成薬として活用されています。
 
 これまでの研究では、補腎強督法により早期ASの骨量喪失の改善や、骨代謝の双方向での調節、骨密度や瘀血状態の改善などが確認されたとしていうます。

 AS治療の一つの方法として、今後も研究が続けられていくものと思います。

 中医学の興味深いところは、単なる古典の処方を検証するだけでなく、日頃の臨床結果から、効果の良かった処方を再検証し、新しい理論・弁証を構成していく点です。そのためにも、経験豊かな老中医たちの処方を勉強することも大切なのです。
posted by 山之内 淳 at 07:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 脈案考察

2012年05月14日

上海で近年急増している大腸癌

 上海市衛生局は、市の重点公共医療サービスの一環として、2012年度は地域にある社区衛生サービスセンターを活用して、大腸癌リスク評価や大便潜血検査を無料で行う方針を発表しています。

 その背景にあるのは、上海市での大腸癌患者の近年の急増があります。

 1970年代には、悪性腫瘍のなかでの発病率が第6位だったのに、現在では第2位に急上昇しています。さらに、発病率も70年代の10万分の12から10万分の56にまで上昇しており、なんと3.67倍の増加医。年平均にすると4%の増加になります。

 この原因について、上海疾病予防コントロールセンターは、いろいろ挙げていますが、どれも納得がいく理由ばかり。

 上海に来られた方なら分かるかと思いますが、いままで経済的に豊かでなかったときは、なかなか摂取できなかった高タンパクで、高カロリーな食生活が、ここ数年で爆発的に増加していますし、穀物摂取の減少、果物や野菜類の摂取減少、運動不足、そして健康診断に行かないという現実。大便鮮血検査の受診率は5%未満ですし、大腸カメラ検査も3%程度ということです。大腸癌を早期で発見するには不可欠な検査なのですが、上海市でも発見されれば大抵は末期で、早期で発見される割合は11.8%で、5年間生存率は43%と低いのです。

 上海にいる日本人を日頃から診察していますが、一部を除いて、大部分が運動不足。大腸癌の予防には、歩いたりする運動が有効なことは、以前にもこのブログで1日30分歩くことと大腸癌のリスクに書きました。

 食生活などライフスタイルを、もう一度見直してみたいとところですね。
posted by 山之内 淳 at 16:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 中国の健康事情

2012年05月13日

中医学を活用した非小細胞肺癌の研究

 近年、大気汚染や喫煙の関係で、中国でも急増している肺癌の問題について、2011年度の中国中西医結合学会の科技奨を受賞した7つの研究成果のうちの一つに、中医学を活用した非小細胞肺癌の研究がありました。

 肺癌は、大きく分けて小細胞肺癌と非小細胞肺癌に分けられます。小細胞肺癌は全体の20%を占め、悪性度が高く、進行も早いです。腫瘍マーカーは、ProGRPやNSEが使われます。一方で、非小細胞肺癌は、肺扁平上皮癌と肺腺癌、肺大細胞癌に分類され、肺扁平上皮癌ではSCCとCyfra、肺腺癌ではCEAやSLXなどが腫瘍マーカーとして使われています。肺腺癌は、非喫煙の若い女性に発生する肺癌として知られています。

 今回の研究では、中国中医科学院広安門医院など13箇所の主要な中国の医療機関が合同で研究を行い、931例の非小細胞肺癌の患者に対して術後の再発率や、生存期間、QOLについて、Mult-Center Clinical TrialやProspective study、Queuing theoryなどの手法を用いて分析しました。

 この中で、化学療法を行っているときは、健脾和胃・益気養血・滋補肝腎を使い、放射線治療をしているときは、養陰生津・活血解毒とし、放射線治療をしていない早期患者の術後は、益気活血・解毒、末期患者の術後は、益気活血・解毒散結を使い、治療段階において、中医学による治則を変化させました。

 その結果、非小細胞肺癌のうち、ステージT〜VAの術後の患者に対しては、体重や体力を改善し、QOLを高め、化学療法による骨髄抑制を抑え、消化器系の副作用も改善し、転移を減少させる傾向にあることが分かったようです。

 いずれにしろ、肺癌治療において、何らかの形で中医薬(漢方薬)を介入させることが有効であるので、単純に数種類の生薬を使うだけでなく、今後はその治則の変化をうまく弁証することが求められるのではないかと思います。
posted by 山之内 淳 at 16:33| Comment(0) | TrackBack(0) | 脈案考察

2012年05月12日

中医学での中薬薬剤師の役割

 西洋医学の医師と中医学の医師とでは、その専門性からライセンスが分かれている中国ですが、薬剤師も同様です。

 西洋医学での薬剤師と中医学での薬剤師の資格は分かれていて、それぞれの役割がはっきりとしています。それほど、生薬を扱うということは、ある意味プロフエッショナルな仕事だとも言えます。中医学の医療としての技術も、代々継承されなければなりませんが、中医薬(いわゆる漢方薬)の薬剤師も、様々な技術を検証されなければならず、いい医師と薬剤師との共同作業で、生薬の調剤がすすめられているのです。私達中医学の医師が中医クリニックでいろいろ生薬の工夫ができるのも、優秀な中薬薬剤師がいなければ実現できません。

 上海市非物質文化遺産の伝統医薬の分野では、中薬薬剤師のそうした技術を、中医薬局全体として保護する動きが出ています。それが、上海市松江にある余天成堂薬局です。1782年創業で、上海エリアでは最も古い中医薬局です。90年代に老舗ブランドに与えられる「中華老字号」の称号を取得して以来、中薬分野での伝統技術の継承に力を入れてきているようです。

 とくに、中医薬局の場合、生薬の配合以外にも、生薬をふるいに掛けたりする作業や、丸薬の製造技術も大切で、最低でも2〜3年の修行が必要といわれています。さらに生薬の修治も、中医薬局の大切な役割で、薬草を乾したらすぐに使えるというわけではありません。

 近年、上海市非物質文化遺産に指定されたことで、さらに伝統的に伝わっている中成薬の処方の保護も可能になり、継承するための素地が出来てくることになります。以前、後継者難が言われていましたが、いまでは若い継承者のトレーニングも進んでいるそうです。
posted by 山之内 淳 at 18:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 生薬・漢方薬・方剤・中成薬